石川・七尾の和倉温泉、上半期売上額が昨年の20分の1「業者が足りず、修理の見積もりも取れない」
読売新聞 / 2024年7月21日 20時24分
能登半島地震の発生から半年が過ぎた今も、石川県七尾市の和倉温泉では、被災した多くの旅館が休業を余儀なくされている。本来は夏の観光シーズンで書き入れ時だが、復旧事業者の受け入れが主となり、上半期の売上額は昨年の20分の1。建物や配管の復旧には多額の費用と時間がかかり、開湯1200年の温泉街は苦境にある。(能登支局 高野珠生)
「本来のおもてなしができず心苦しい」。老舗旅館「のと楽」の浦辻勇人管理部長(63)が、床がひび割れたロビーで嘆いた。断水は3月下旬に解消したが、ボイラーなどは損傷したままで温泉は提供できない。本館建物の修理が進まず、客の受け入れは全177室のうち別館2棟の計54室に限られる。現在の宿泊者の大半は復旧事業者や支援ボランティアらだ。浦辻部長は「業者が足りず、修理の見積もりも取れない。来春には通常営業を再開したいが……」と懸念する。
和倉温泉旅館協同組合によると、加盟する旅館やホテル21軒のうち、一般客を受け入れているのは今月中旬の時点で2軒だけで、10軒は復旧関係者に限定している。9軒は休業中だ。
1~6月の宿泊者数は4万8111人で、前年同期の17%にとどまった。6月は1日あたり337人。平時に収容できる2000人には遠く及ばない。食事や浴場が提供できないため、客単価も下がる。昨年は69億4600万円あった上半期の売上額は、3億7700万円にまで落ち込んだ。
被害調査が進んでいないため、修復や建て替えの方針を決められない経営者も多い。複数の旅館が共同で所有する源泉の配管は5月下旬に仮復旧したが、本格復旧には1億円かかる見込みで、完了時期も見通せない。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で総合1位常連の「加賀屋」も施設の外壁も崩れるなどし、営業再開は2026年中となりそうだ。
和倉温泉は輪島市、珠洲市などを巡る観光拠点となってきた。組合加盟施設の従業員は計約1100人で、地域の雇用も支える。和倉温泉観光協会の宮西直樹事務局長(50)は「和倉温泉の旅館が壊れたままでは、能登は体力を奪われていく一方だ」と危機感を募らせる。
温泉街の復興のあり方を巡り、七尾市や旅館の関係者、住民らは協力して6月から議論に着手。来年2月に具体策をまとめる計画だ。
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