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障害者ホーム 福祉を蔑ろにする不正許すな

読売新聞 / 2024年7月22日 5時0分

 障害者を支援する制度を悪用し、不正に利益を得るような行為は、断じて許されない。障害者が安心して暮らせる環境を守らねばならない。

 障害者向けグループホームの運営会社「恵」が、入居者から食材費を過大に徴収していた。総額は3億円に上るという。

 愛知県と名古屋市は障害者総合支援法に基づき、県内の「恵」5施設の事業者指定を取り消すと決めた。厚生労働省は不正が組織的に行われていたとして連座制を適用し、全国約100か所の施設についても運営を差し止める。

 グループホームは、知的障害や精神障害などがある人が、スタッフから食事や入浴の介助を受けて少人数で暮らす施設だ。「恵」はその施設で、実際にかかる食材費の3倍にあたる金額を入居者から集め、会社の利益にしていた。

 食材費は実費のみ入居者から徴収できる、という厚労省の規定に違反していた。十分な食事を与えず、障害者の人権を ないがしろにした。極めて悪質で言語道断である。

 障害者は、施設の対応に不満があっても、意思表示が難しい。中には食事の量が足りず、体重が減った人もいたという。

 今後、運営できなくなる全国の「恵」の施設には、1800人が暮らしている。入居者が行き場を失うことがないよう、国と自治体は、新たな住まいの確保などに全力を挙げてもらいたい。

 「恵」では、勤務実態のない職員を働いていたように見せかけ、公費で支払われる報酬を水増し請求する不正も行っていた。刑事責任の追及も検討すべきだ。

 障害のある人はかつて、管理された大規模な施設に長期間入所するケースが多かった。こうした状況を改めるため、厚労省は、少人数で主体的に生活できるグループホームの制度を導入した。

 それにより、株式会社も運営に参入できるようになり、現在は全国1万3000か所で17万人以上が暮らしている。

 課題は、施設の質の確保だ。「恵」以外でも、入居者への虐待や、報酬の不正請求などが後を絶たない。障害者の暮らしを大切にするはずの施設で、障害者の人格を否定するような行為が繰り返されていたことは深刻な事態だ。

 国や自治体は、全国の施設を定期的に点検する仕組みを整える必要がある。第三者によるチェック機能を導入するなど、施設の密室化を防ぐことが重要だ。開かれた施設の中で、障害者が地域の一員として暮らせるようにしたい。

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