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三菱UFJ系3社で違法な顧客情報共有…銀行業界は引き続き規制緩和を要求、証券業界は反発し議論停滞か

読売新聞 / 2024年7月22日 10時35分

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の3社がファイアウォール(FW)規制違反で、業務改善計画を金融庁に提出した。政府はこれまで段階的にFW規制の緩和を進めてきた。銀行業界は引き続き緩和を求めるが、相次ぐ違反や証券業界の反発もあり、議論は停滞を余儀なくされそうだ。(経済部 市川大輔)

業務改善計画

 MUFG傘下の三菱UFJ銀行と証券2社は6月24日、FW規制違反で金融商品取引法に基づく業務改善命令を受け、7月19日に業務改善計画を提出した。MUFGの亀澤宏規社長は記者会見で「銀証連携の推進と内部管理体制のバランスが崩れていた」と陳謝した。

 FW規制では、2007年にみずほ証券、22年にSMBC日興証券が行政処分を受けた。今回のMUFGの事案を含め、いずれもメガバンクが取引先企業の情報を、グループ内の証券会社に共有する手法だ。銀行の有利な立場を利用し、証券事業で稼ぐという考え方が、業界に根強く残っていることがあらわになった。

 金融庁の市場制度に関する作業部会は5月、FW規制のさらなる緩和を論点に挙げたが、6月下旬の報告書案では「継続的に検討していく」との表現にとどめた。金融庁幹部は「今回の違反で緩和の議論は当面止めざるを得ない」とこぼす。

足かせ

 FW規制は1993年に導入された。銀行が子会社を通じて証券業に参入することを解禁したことを受けたものだ。日本では、資金調達を銀行の融資に頼る企業が多い。欧米に比べて存在感が強い銀行が、さらに影響力を持つことを防ぐ狙いがあった。

 その後、米欧で規制緩和が進んだため、日本も歩調を合わせた。99年の改正で、金融機関は企業から同意を得れば、非公開情報をグループ内で共有できるようになった。2009年には、企業に事前に通知し、拒否されなければ可能となった。

 学習院大の神作裕之教授は「FW規制は情報共有を制限する内容で、過剰規制になっている可能性がある」と説明する。

 大手銀行の担当者は「グループの証券会社に情報を共有できないと、顧客に幅広い提案ができない」と主張する。FW規制がない欧米との国際競争で足かせになっているとの指摘もある。

高額罰金

 証券業界は、さらなる緩和には慎重な立場だ。銀行グループに属さない独立系証券が、銀行系証券との競争で不利になりかねないためだ。証券業界の関係者は「問題が繰り返し起きているのに緩和の議論をするのは疑問だ」と話す。銀行・証券間の情報共有を望まない企業も一定数存在しており、「顧客の利益を考えるべきだ」という。

 FW規制がない欧米では、金融機関の情報管理が厳しく、銀行が優越的地位を乱用した場合などの罰金も高額だ。金融業界を巡る環境が異なる日本では、規制がまだ必要だとの声もある。

 西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士は「銀行業界は緩和の具体的なメリットを示さないといけない」と指摘する。

 ◆ファイアウォール(FW)規制=同じ金融グループ内の銀行と証券会社で、顧客企業の非公開情報を無断で共有することを禁じる規制。銀行・証券間のやり取りを意図的に遮断することを「防火壁」にたとえた。顧客の情報が特定の金融グループに集中することや、銀行が強い立場を乱用することを防ぐ目的がある。

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