偽広告詐欺「閉鎖チャットで洗脳されていく」…次々投稿される「成功談」、350万円被害
読売新聞 / 2024年7月22日 5時0分
著名人の名前で信用させ、LINEに誘導してだます――。著名人のなりすましとみられる投資関連広告に関する読売新聞と東京大学の澁谷遊野准教授(社会情報学)による調査では、詐欺グループのこうした手口が明らかになった。被害者の話からは外部の目が届かない閉鎖チャット特有の課題が浮かぶ。(スタッブ・シンシア由美子、小峰翔)
勧められるまま
「閉じられた空間の中で、洗脳されていく感覚だった」。首都圏の音楽教室で講師を務める60歳代の女性はそう語る。
昨年7月、インスタグラムで実業家の前沢友作氏が投資教室を開いたとする広告をクリックすると、約100人が参加するLINEのグループトークに招待された。そこでは、アナリストを名乗る「先生」が投資を促し、参加者が<もうけたお金で旅行に行く>などと成功談を相次いで投稿していた。
参加者が次々と<入金した>と報告する中で、勧められるままに計約350万円を入金した。「みんながやっているからと、あおられるような気持ちになっていった」と話す。
10月に入り、入金分が引き出せなくなったことで、詐欺と気づいた。女性は「いま考えると怪しいやり取りもあり、ほぼ全員がサクラだったのだろう。第三者の目がなく、冷静な判断ができなかった」と振り返る。
警察庁がSNSを利用した投資詐欺の被害者に聞き取ったところ、今年1~5月の間、92・2%がLINE上でだまされていた。
共通する手口
読売新聞と澁谷准教授は、著名人のなりすましとみられる投資関連広告2141件について、それぞれの掲載期間も分析した。その結果、掲載を開始した日か、その翌日に表示されなくなったケースが98・4%を占めた。一方で、投資関連以外の広告を抽出調査した結果、同様のケースは49・8%にとどまった。
なりすまし広告を巡っては、詐欺グループがプラットフォーム(PF)事業者の監視を免れるため、短期間の広告出稿を繰り返しているとの指摘がある。今回分析したデータからもその可能性が浮かんだ。
また、なりすまし広告には、似たような文章が多く使われているため、2141件の広告の文章の類似度も解析した。すると、ほとんど同じ文章が6パターンあることが判明。全広告の97%にあたる2074件が、この6パターンのいずれかに該当した。
最も多かったのは、元経済産業官僚で慶応大教授の岸博幸氏らの名前をかたり、「豊かな人生を送るお手伝いを続けます」などと呼びかける内容の定型文で、全体の約7割を占める1492件に上った。
成蹊大客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんは「PF事業者は、詐欺グループが使う手口のパターンをより詳細に分析し、事前審査に生かすべきだ」と指摘している。
読売新聞と共同で調査を実施した東京大の澁谷遊野准教授の話「プラットフォーム間をまたぐ情報流通に関する実態把握は十分に行われているとはいえず、メカニズムの解明が必要だ。特に閉鎖コミュニケーション空間に誘導する広告の検知や削除などの対応が求められる」
しぶや・ゆや 専門は社会情報学。総務省の「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」の委員を務める。
メタ、3分野で対策
米メタは今月16日、三つの分野に重点を置いて対策を進めていると発表した。
1点目は、分析の強化を挙げ、詐欺広告の最新の特性を理解し、検出技術の改善や審査チームの精度向上につなげているとした。
2点目は、著名人の画像を悪用する広告主を早く特定し、今後の広告掲載の禁止などの措置を講じているとし、3点目は、新規の広告主の場合、電話番号による本人確認などを実施し、審査を厳格化するとした。
調査の概要
調査対象の広告は、メタが運営するSNSに掲載中の全広告と、過去の一部の広告を閲覧できる「広告ライブラリ」で収集した。調査の概要は以下の通り。
〈1〉3月21日~4月20日に掲載された広告から、投資関連ワード(「投資」「株式」「銘柄」「配当」「急騰」)を含むものを集めた。広告主が同じ内容の広告を掲載した場合も1件と数え、計9439件を収集した。
〈2〉これらの広告のうち、いずれも「なりすましとみられる」と判断した著名人(26人)の名前や肖像が掲載された広告計2141件を抽出。LINEへの誘導率の調査では、広告掲載時のリンク先が判明している1570件に絞り込んで分析した。
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