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島根で1人だけ栽培していた「とろけるようなメロン」、「絶やしたくない」と立ち上がった農家

読売新聞 / 2024年7月22日 13時23分

黄色く色づいたゴールデンパールを手に「水分がたっぷりあるのでスプーンで食べて」と話す渡部さん(松江市で)

 高品質と評されながらも、栽培が難しく育てる人がわずかしかいない島根県オリジナル品種のメロン「ゴールデンパール」に情熱をささげる男性がいる。松江市で安藤農園を経営する渡部旭さん(44)。濃厚な香りと果肉の軟らかさに魅せられ、10年前にあった島根県のプロジェクトメンバーとしてただ1人、現在も研究を重ね、販路の拡大を目指している。(松浦彩)

 「ゴールデンパールは温度や湿度の変化に敏感で、気むずかしい子なんです」

 3日夕、松江市意宇町のビニールハウス。メロンの収穫をしていた渡部さんは、我が子に向けるような優しいまなざしでメロンを見つめ、笑顔を見せた。「順調に出来ている。少しの変化も見逃さないよう、毎日丁寧にチェックした成果かな」

 ゴールデンパールは島根県が半世紀前に開発した。渡部さんが初めて食べたのは、約20年前。種苗も取り扱う農園の顧客男性が偶然、栽培していた。口に入れると、とろけるような実の軟らかさと香りの高さに「こんなメロンが島根独自の品種としてあるのか」と驚いた。

 病気に弱くて育てるのが難しく、当時作っていたのはこの男性だけ。後継者を育てる意思はなく、「そのうち消えるなんてもったいない」と思ったという。だがその10年後、ゴールデンパールの作り手を育成する島根県のプロジェクトがあると聞き、意を決して参加した。

 栽培の難しさは、予想以上だった。初の収穫時は3割程度の出来栄え。さらに食べ頃は収穫から約1週間と短く、安値でしか売れない。3か年のプロジェクト終了後、渡部さんを除く全参加者が「作るのが難しい上にもうけにならん」などと手を引いた。

 渡部さんは「このメロンを絶やしたくない。いずれファンも増えるはずだ」と孤軍奮闘。その熱意はじわりと広がっていく。まずは地元産品を手がける会社「ちいきおこし」(松江市)から声がかかった。珠玉の果実を知った同社が、PRと販売の協力を申し出た。

 2018年からは、同社と共に出雲大社の縁結びにちなんで「ご縁玉」と命名し、規格外品を使ってソーダやアイス、ゼリーと関連商品を開発。規格外品の活用策に道筋ができたことで、他の農家も加わりやすくなり、現在は松江市内の農家2軒と栽培を続ける。

 今期の出荷量は2500玉程度といい、県の特産品まで育て上げるには「少なくとも今の10倍以上の出荷が必要」と渡部さん。新規参入を目指す農家の研修生を積極的に受け入れ、栽培のコツを惜しみなく伝授するなど仲間の確保にも力を入れる。「これからも『松江のゴールデンパール』を広めたい」と意気込む。

 ゴールデンパールの出荷は7月末まで。問い合わせは、ちいきおこしが運営する「八百万マーケット」(0852・67・6650)。

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