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「ライチョウ、翔んだ。」近藤幸夫さん 「神の鳥」復活へ、渾身の記録

読売新聞 / 2024年7月26日 15時30分

 愛らしいライチョウは高山の人気者だが、生息数は実は全国で2000羽弱。本州中部の高山帯にのみ生息する絶滅危惧種だ。山の荒廃や天敵の増加が原因とされる。

 「ライチョウのおかげで人生の第2の扉を開けてしまった」と苦笑する著者は、1959年、岐阜県生まれ。信州大で山に親しみ、朝日新聞で山岳記者として登山家の海外遠征などを取材してきた。きっかけは1羽のメスだった。

 2018年夏、中央アルプスの木曽駒ヶ岳でライチョウのメス1羽が発見された。「中央アルプスでは半世紀前に絶滅したはず。驚きました」

 DNA解析で北アルプス方面から渡ってきたことが判明、後に「飛来メス」と呼ばれるこの1羽が、国のライチョウ保護増殖事業を大きく進展させることになる。自身も取材にのめり込んでいく。

 飛来メスに北アルプスの乗鞍岳で採取した野生の有精卵を抱かせて 孵化 ふかさせる。乗鞍のライチョウ3家族を木曽駒にヘリ移送する……前代未聞の復活作戦に挑むのは熱血の鳥類学者、中村浩志・信州大名誉教授と教え子たち。作戦は何度も困難に直面する。本書は、その不断の挑戦を追ったノンフィクションだ。

情熱にひきつけられ

 中村氏の情熱に引きつけられ、取材者の立場を超え、調査活動にも従事した。事業半ばで社から異動を告げられ、定年を前に退職。山岳ジャーナリストとして、ライチョウ取材を継続する道を選んだ。「中村先生は誰もやったことのない未知に挑んでいる。そのフロンティア精神は、未踏峰を目指す登山家に近い」

 今夏、中央アルプスのライチョウは120羽を超えたと報告された。高齢の飛来メスも、ヒナを産み育てている。「まさに神の鳥です!」

 鳥と人、そして著者自身の再生へと続く、 渾身 こんしんの一冊である。(集英社インターナショナル、2200円)松本由佳

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