「目に見えない商品を扱う業界、信頼がベース」「金利のある世界は歓迎」…生命保険協会・永島英器会長
読売新聞 / 2024年7月23日 10時0分
長期金利の上昇によって、生命保険会社が扱う商品は、契約者が受け取れる利回りが改善している。各社が販売する商品の魅力が増す一方で、丁寧な説明も必要になる。生命保険協会の会長に就任した永島英器会長(明治安田生命保険社長)に話を聞いた。(聞き手・橋爪新拓)
顧客本位の業務運営に取り組む
――会長就任の意気込みを。
「取り組みたいことは三つある。まずは顧客本位の業務運営だ。2023年に営業職員の法令順守に必要な着眼点をまとめた。それを基に、各社が進めてきた取り組みを共有したい。(契約時に保険料を一括で払い込み、外貨で運用する)一時払いの外貨建て保険の販売については、金融庁の指摘を受けた。すでに、ガイドラインを見直したが、各社の取り組みをフォローアップしたい。
二つ目は国民一人一人の豊かな人生の実現に向けた取り組み。もう一つは、子どもたちや学生に向けた金融や保険に対する教育をしっかりやっていきたい。
特に、顧客本位の業務運営の推進については、力をいれたい。目に見えない商品を扱う保険業界は、信頼がベースとなる。安心してつきあってもらうために、不断の努力をしなければならない。体制を整え、しっかり説明する。顧客との接点を増やすとともに、保険業界がこう考えている、役立つ業界だと思ってもらえるような努力はしたい。
116年の歴史がある協会なので、先輩や先人に敬意を払うことで未来の世代に対する責任が芽生えると思う」
――外貨建て一時払い保険は、短期間での解約と乗り換え販売が頻発した。
「まずは各社が(営業職員に)しっかり指導をしているかどうか。PDCA(計画、実行、評価、改革)を回して体制を高度化させていくのが一番大事だ。各社の取り組みについて、アンケートを行いたい。23年に着眼点をまとめた時も、各社で事例を共有したので、参考にしたい。(商品を扱う)銀行と代理店とコミュニケーションを取ることも大切だ。
商品を組成する側にも責任がある。どんな顧客を想定して作っているのか。想定した通りに売られているのか。アフターフォローはしっかり行っているか。気づいたことがあれば、PDCAを回して、規定や商品の内容を替えていく」
予定利率が上がり、商品の選択が増える
――金利が上昇を始めた。
「金利のある世界に戻ったことは歓迎している。これまでの商品開発では、貯蓄性のある商品がドル建て一本足打法だったので、円建ての商品も幅広く展開できるようになる。(契約者に約束する運用利回りの)予定利率が上がり、お客様の選択肢が増えるのはいいことだ。
保険会社の社員で金利が上がる局面を知っているのは50歳以上と少ない。今後、経験を積んでもらう必要がある。ただ、あまり急激な金利上昇は社会的にもよくない。急激なインフレ(物価上昇)も同じだ。
円安については、協会長として具体的なことを申し上げられないが、個社で言えば、生命保険各社は、対外資産を持っているので、プラスになる。かつては輸入物価が上がって、インフレにつながると心配されたが、最近はそうでもない。でも、行き過ぎた円安はよくない」
――損害保険業界は、代理店との関係性が問題になった。
「隣の業界で起きていることは関係しないというスタンスは良くない。気づきの機会として顧みて、不断の努力で改善しなければならない責務がある。代理店の話は、生保業界も近い。利益供与の問題もあった。生保についても、出向者が多いとか、広告費で過大な利益供与があるのではないかといった報道もある。基本的には個社で取り組むべき問題だと思うが、協会でもできることはやっていきたい」
――政策保有株について。
「株式については、生保と損保では考えが違う。1年物の保険を売っている損保と、10~20年と長い生保では違う。負債を長く抱えるので、運用資本の一つとして株式投資は欠かすことができない運用対象だ。過去10年から20年をみても、日本でも米国でも、債券よりも株式投資の方がバランスはいい。投資はこれからも大事な運用方針なのが大前提だ。
個社としていえば、保有目的が連携・協業なのか、投資なのかを分けている。別途、説明が求められれば検討する余地はある」
◆永島英器氏(ながしま・ひでき) 1986年東大法卒、明治生命保険(現明治安田生命保険)入社。生命保険の不払い問題が発生した当時は、現場の営業所長で顧客へのおわびに追われた。企画部長や人事部長を歴任し、営業職員の処遇改善など、働き方改革を進めた。常務執行役を経て、2021年5月社長。24年7月から生命保険協会会長。東京都出身。
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