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真夏のパリ、トライアスロン選手はアイスベストやヘッドバンドなどで「深部体温」下げる

読売新聞 / 2024年7月25日 17時17分

トライアスロン、深部体温を下げろ

[超人の科学]

 己の技と肉体を極限まで磨き上げたトップアスリートの祭典、パリ五輪の開幕が26日に迫った。驚異的なパフォーマンスをさらに高める最新テクノロジーが次々と登場し、様変わりした選手強化の最前線をリポートする。

 スイム(水泳)1・5キロ・メートル、バイク(自転車)40キロ、ラン10キロと、約2時間で3種目を戦うトライアスロン。過酷な勝負を制するには、コンディションをベストな状態に保ち、心技体を整える必要がある。

 5月、横浜市で行われた世界シリーズ。日本男子で大会史上最高の7位に入った日本代表のニナー賢治(31)(NTT東日本・NTT西日本)は「理想とする体の動きに近づいている」と、五輪への意気込みを語った。

 長丁場のトライアスロンは気温の影響を受けやすく、体の適応が重要となる。7月のパリでは最高気温が30度を超える場合もあり、熱波が起きれば状況はさらに悪化する。

 コンディションを保つ鍵を握るのが、体の中心部の深部体温の管理だ。深部体温が38・5度を超えると、筋肉や皮膚の血流量が増え、内臓や脳では逆に減ってダメージを受ける。さらに発汗で血液の水分量が減ると、脈拍が上昇して心臓に負担がかかる。

 日本トライアスロン連合(JTU)はパリに向け、あらゆる暑さ対策を進めてきた。契機の一つは、2021年東京パラリンピックの代表合宿で行った試験だ。

 試験では、室温35度以上の「暑熱環境」を人工的に作り出せる施設で自転車を30分以上こいでもらった後、深部体温の変化を計測した。

 10分おきに冷水を飲んでも、30分で体温が38・4度まで上昇した選手もいた一方、シャーベット状の氷を混ぜた飲料「アイススラリー」や保冷剤を入れた「アイスベスト」で体を冷やすと上昇が緩やかになった。

 結果を踏まえ、JTUはパリで、選手の要望に合わせた冷却手段を複数用意する。指導した立命館大の後藤一成教授(体育科学)は「持てる技術を100%発揮できる体調を整えられるかが勝負だ」と指摘する。

 現地では「暑熱順化トレーニング」に取り組む。暑熱環境で低~中強度の運動を5~14日継続すると、体が慣れて心拍数や深部体温の上昇が抑制され、血液中の水分量が増える。男子代表の小田倉真(31)(三井住友海上)は「一番暑い時間帯を選び、2時間ほど体を動かすつもりだ」と話す。

 気象情報会社「ウェザーニューズ」は専用ウェブサイト「 MiCATA ミカタ」で、会場別の天気や気温などを日本代表選手らに発信する。こうした情報もチェックし、試合を迎える。

 当日は、筋肉の収縮を促すミネラルを補給するため、スポーツ庁の委託で食品企業などが開発したスポーツ飲料を活用。水分を蒸発させて頭部の温度上昇を抑える特殊なヘッドバンドも用意する。

 日本勢は、五輪でメダル獲得の経験がない。「挑戦者の日本は、あらゆる英知を結集して戦うしかない」。JTUで選手の科学サポートを担当する森谷直樹は力を込める。

 科学的サポートを積み上げ、メダルをたぐり寄せる。

睡眠、疲労アプリで管理

 国も、選手の体調管理を支援している。五輪選手らの練習拠点となっている国のハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC、東京都北区)は、専用アプリ「アスリートポート」を開発。選手が体重、体温、疲労感、睡眠の深さなどのデータを毎日入力し、コーチ陣とも共有して体調管理に活用できるようにした。

 コーチが合宿に同行できなくても遠隔指導が可能で、HPSC研究員の中村真理子(48)は「体調変化を客観的に評価し、最高のパフォーマンスを引き出せる」と話す。

 スポーツ庁が支援する順天堂大のチームは昨年、磁気共鳴画像装置(MRI)で陸上選手の脳の構造を継続的に調べ、競技力との関連を探る研究を開始。脳の違いに応じた練習が可能になるかもしれないという。

 同大の 和気 わき秀文教授(生理学)は「身体の動きが複雑になればなるほど脳の関与は強くなる」と語る。(敬称略)(科学部 加藤遼也、前村尚、船越翔)

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