1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

いつでも食料品受け取れる「公共冷蔵庫」、導入検討進むも「設置場所」探しや運営主体が課題

読売新聞 / 2024年7月29日 16時23分

 困窮世帯などが食料品などを無料で持ち帰ることができる「コミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)」を設置しようとする動きが長野県内でも始まっている。周囲の目を気にせず利用できることから、これまで支援から漏れていた人の支援につなげられる可能性がある。ただ、設置場所や周知方法には課題もある。(村上藍)

コロナ禍を機に拡大

 公共冷蔵庫は、食品ロスの削減を目的に欧州で始まった仕組みで、企業や個人から寄付された食品や日用品を保管し、支援を必要とする人が無料で受け取れる。建物やアパートの一室に冷蔵庫や冷凍庫、陳列棚などを設置し、利用者は電子ロックなどで解錠して入室。食品などを自由に受け取る。

 国内では一般社団法人「北長瀬エリアマネジメント」(岡山市)が2020年、コロナ禍で困窮世帯への支援として導入し、その後全国に広がりつつある。食品などを無料配布する「フードパントリー」は決まった時間に対面で行われることが多いが、公共冷蔵庫は基本的に無人で、利用者の都合に応じて、いつでも受け取れるのが特徴だ。

運営主体見つからず

 諏訪地域で子ども支援などに取り組む団体でつくる「諏訪圏域子ども応援プラットフォーム」は昨年、公共冷蔵庫導入に向け、冷凍庫などを5台購入した。コロナ禍で企業などから寄付された食品が増えた際、子ども食堂だけでなく個人に直接配布できれば、より多くの人に役立つと考えたのがきっかけだ。また、食品を保管し、子ども食堂の運営者が受け取りにくることで配布に伴う負担を減らせるなど、地域での活動を持続可能なものとする利点もあるという。

 同プラットフォームの事務局を務める八幡カオリさん(58)は「子ども食堂につながっていない人も人目を気にせずに来られる。支援の多様な手段をつくりたい」と話す。

 冷凍庫は現在、団体の拠点に仮置きされ、食材の保管に使われている。自由に出入りして食品を取れる設置場所や、在庫を管理する運営主体が見つからないためだ。八幡さんは「地域や企業などと連携して、早急に稼働させたい」と意欲を見せる。

自立への仕組み重要

 千曲市の更埴ライオンズクラブは事業所の一角を仕切り、「みんなの冷蔵庫ちくま」の運営を11月にスタートさせたい考えだ。当面は日中に陳列棚に並べるだけとするが、ゆくゆくは業務用冷蔵庫などを整備する方針だ。

 同クラブは経営者も多く、食品の寄付などを地元経済界に働きかけやすいのが強みだが、同クラブの岡田昭雄さん(72)は「地域に理解を広め、本当に困っている人に知ってもらい、取りに来てもらう環境をどう作ればよいのか」と懸念する。今後、地域の困窮者の支援団体などと運営委員会を設け、話し合いを進める。

 長野大学の鈴木忠義教授(社会福祉学)は「食品配布に依存してしまわないように、公共冷蔵庫を通して、支援先につなぐ仕組み作りが大切」と指摘する。配布場所で支援や自立につながる情報を発信し、支援団体との橋渡しも必要となる。

1食110円の子育て家庭も

 物価高騰は、困窮世帯の食事や子どもの健康にも深刻な影響を及ぼしている。

 NPO法人「キッズドア」(東京都)は5~6月、支援している困窮子育て家庭を対象に調査を実施。回答した1821世帯のうち、主に母と子の2人家族623世帯の35%、3人家族655世帯の44%が、1か月あたり1人1万円未満(1人1食110円程度)の食費で生活していた。昨年よりも、子どものために親の食事を減らしたり、肉・魚などを減らしたりする家庭はそれぞれ半数を超えた。

 子どもの成長も懸念され、「子どもが健康診断で栄養不良などの指摘を受けた」と1割以上が回答していた。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください