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「シャープらしさ取り戻す、他社と同じモノに満足せずまねされる商品開発」…シャープ・沖津雅浩社長兼CEO

読売新聞 / 2024年7月24日 11時29分

取材に応じるシャープの沖津氏(堺市で)

 液晶テレビ「アクオス」で世界市場を駆け上がったシャープは、テレビ向け液晶パネルの生産から撤退を決めた。今後の成長戦略をどう定めていくのか。親会社の台湾・ 鴻海 ホンハイ精密工業との関係は変化するのか。沖津雅浩社長兼最高経営責任者(CEO)が、読売新聞などのインタビューに応じた。(聞き手・仁木翔大)

『ヒット商品がない』と指摘

 ――鴻海グループ入り後、初のシャープ生え抜きトップとなった。

 「以前のシャープらしさを取り戻したい。シャープは創業以来、(独創的なものづくり商品によって)『他社にまねされる商品』として評価をいただいていた。(今年6月の)定時株主総会でも、株主からは『ヒット商品がない』と指摘された。他社と同じモノや現状に満足せず、スピード感を持って取り組みたい。シャープらしさをよみがえらせることが私に課せられた一番のミッション(使命)だ」

 ――具体的にどうするのか。

 「まずは構造改革を進める。2027年度には、既存のブランド事業で営業利益率7%を実現する。白物家電は、東南アジア諸国連合(ASEAN)など普及率の伸びが期待できる国もある。利益率を上げるには、日本や米国、欧州のOEM(相手先ブランドによる生産)でやっている高付加価値の商品比率を上げていく。

 投資は昨年も残念ながら、(液晶パネルなどの)デバイス事業を先行させてしまった。手元のキャッシュ(現金)は多くはないが、比率としてはブランド事業に多く振り分けていけると見込んでいる。そのためにも、デバイス事業に関連するアセットライト(資産の売却など)を早急に進めていく。それらを進めつつ、新事業の開拓も図る。

 新しい商品を作るには金型投資が必要になる。たとえば、冷蔵庫では数億の投資、エアコンも洗濯機も3、4億円は必要だ。それより小さい商品でも1~2億円は見込まれるが、商品の付加価値を上げる投資を積極的に行っていく。一方で、デバイス関連は投資のけたが違う。ちょっと工場を修繕するだけで1億円規模になる。デバイス事業の構造改革を進めて投資コストを抑えることは、ブランド事業にとって、非常に大きな投資につながる成果を生む。今期の最終利益50億円の黒字化は必ず達成する」

価格競争とは違った戦略

 ――海外勢との競争は激しい。

 「液晶や太陽光パネルなどのデバイスでは、政府からの補助金の額が大きい中国勢とは普通に競争しても勝てない。さらに、国の政策からも影響を受ける。白物家電では、欧州の家電メーカーのようになりたい。独ボッシュやミーレ、スウェーデンのエレクトロラックスなどは、付加価値高い商品を持ち、ブランドも相当浸透させている。価格競争とは違った戦略があり、我々もそういう方向で生き残りを図るべきだ」

 ――シャープらしさはどう打ち出していくか。

 「良い技術ならば、商品が売れるという時代は終わった。お客さんが欲しがる、困っていることを助けられる商品が必要だ。そのために何をつくったらいいかを決め、それをどんな方法でやっていくのかが重要だ。技術が先行する『技術プッシュ型』のやり方を変えないと、もうヒット商品は作れない。現場に出て、お客さんが何を望んでいるか、見に行くことだ。アイデアや困りごとは現場にある。それをいかに早く吸い上げ、解決する商品を作れるかが大事だ」

 ――堺工場の今後は。

 「(大型液晶パネルを生産する)SDPは盆過ぎには完全停止する。以降はAIデータセンターとしての活用を進め、工場の中にある設備については、インドなどで活用してもらえないか、検討を始めている。データセンター事業は、ソフトバンクとKDDIのほか、数社と協議をしている。今協議しているところ以外に、新たに協議を始めることはもうない。あとはそれぞれ具体的に詰めていく状況にある。建屋を貸すのか、それとも売却するのかは検討中だ。ソフトバンクとKDDIとは、この件以外にも協業できないか、検討を進めている最中にある。決まったものはまだないが、25、26年度には収益に織り込んでいくことは十分にある」

失敗もあったが、大きなメリットも

 ――鴻海との今後は。

 「ブランド事業では多くの失敗があった。(執行を担う役員体制を見直すなどし、)既存のブランド事業はシャープに任せるということだ。今後は、鴻海が勝っているところをうまくシャープが取り入れ、両社にメリットになるようにやっていきたい思いがある。

 AI(人工知能)やEV(電気自動車)は、鴻海はすでに手がけているが、うちはまだ新参者だ。技術者も取れていない。鴻海の力を借りて、26、27年度くらいに事業をスタートし、売り上げが立つビジネスにしたい。最低でも年間100億円を売り上げる規模には持っていきたい。

 失敗もあったが、大きなメリットが生まれたところもたくさんある。仮に、これまでの期間、日本人がトップをやっていても(業績回復は)非常に厳しかったと思う。鴻海側も様々な試みを経て、問題や課題を整理したことで、新しい組織体制になった」

 ――本社を移転する考えは。

 「私としても大阪市内に戻りたいとは考えている。(創業地である)旧本社の前に土地はあり、(移転先として)一案ではある。まずはきちんと利益を出して移動できるお金を作ってと、考えている。(利便性の高い地域への本社移転で)当社に入ってくれる人材が増えるだろうといった効果も見込まれる」

◆沖津雅浩氏(おきつ・まさひろ) 1980年京都工芸繊維大工芸卒、入社。常務執行役員、専務執行役員、代表取締役副社長を経て、2024年6月社長。白物家電や太陽光発電パネルを統括する部門の責任者を歴任した。鴻海精密工業の傘下に入ってから、シャープ生え抜きの日本人として初めてCEOに就任。京都府出身。

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