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韓国・申源湜国防相のインタビュー要旨

読売新聞 / 2024年7月24日 5時0分

22日、読売新聞のインタビューに応じる韓国の申源湜国防相=小池和樹撮影

 韓国の (シン) (ウォン) (シク)国防相が22日、ソウルで読売新聞のインタビューに応じた。日韓、日米韓の安全保障協力や北朝鮮情勢などの様々な質問に答えた。

――日米韓3か国の安全保障協力について

 日米韓には共通の安全保障上の脅威があり、サプライチェーン(供給網)の再編、経済安保などを見ても、韓日、韓米日の共同対応が今ほど重要になったことはない。

 ただ、基準となる文書がなければ、その時々の政権や国内政治によって、3か国の安保協力が変化しかねない。文書を作り、不可逆的に、後退できないようにする。そのため3か国(の防衛相)で署名し、それを土台に前に進もうとしている。

 昨年8月のワシントン郊外の米大統領山荘キャンプデービッドでの韓米日首脳会談をフォローアップする上での要は安保協力だ。これまで最もうまく機能していなかった安保協力の分野を(文書の作成で)具体的に実践する。

 文書に盛り込む内容で最も重要なのは高官交流だ。また(6月に)3か国で行った初の多領域共同訓練「フリーダム・エッジ」の今後など、交流と訓練全般の原則を決める。内容については3か国でほぼ合意に達し、最後の調整中だ。

 文書の作成、多領域共同訓練の実施はいずれも韓国が提案した。3か国の共同訓練はこれまで海上、空中など単一の領域で行われていたが、北朝鮮の核・ミサイルの脅威は1か所では解決できない。海上、空中、サイバーなど多領域で同時に対処する必要があった。

 フリーダム・エッジは、力による現状変更を試す勢力から自由世界を守る鋭い刀で、防波堤だ。今回の訓練は対潜水艦、海上ミサイル防御、空中、サイバー防御など7つの訓練で構成した。3か国の多様な戦力を活用し、水上、水中、空中の脅威への対応能力を向上させ、サイバー防御訓練を行った点に意味がある。

――日本との安保面での協力の意義について

 6月に日本の(木原)防衛相と会談し、(2018年の韓国艦による海上自衛隊機へのレーダー照射の)問題の再発防止策で合意し、韓日、韓米日の安保協力を強化する土台を整えた。これを契機に、中断していた韓国軍と自衛隊の交流を再開し、多様な意思疎通のチャンネルを復元する。

 韓日は同盟関係ではないが、米国の同盟国という共通点がある。韓日は互いの立場が違う点もあるが、安保協力は異論の余地のない分野だ。韓日両国の国民も同意していると思う。両国は地政学的な要件や安保、経済などの条件から見ても、協力は不可欠だ。

 韓国は現在、北朝鮮を含め、力による現状変更を進めて自由と平和を脅かす勢力から、世界を守る自由の防波堤となっている。韓国や韓米同盟がなければ日本の安全はどうなるか。韓国が最前線に出ていることが、日本にとっては非常に心強い状態だ。

 韓国も自国の安全を守るために韓米同盟を維持しているが、後方の日本がなければ、韓米同盟の完全性が弱まり、様々な問題に直面する。特に朝鮮半島有事の際、韓米同盟が継戦能力を維持するには、日本にある国連軍司令部の後方基地が極めて重要だ。

 (韓国軍と自衛隊による燃料などの相互供給を可能にする)ACSA(物品役務相互提供協定)の締結は検討しておらす、進める計画は現在のところない。

―― ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の 金正恩 キムジョンウン 朝鮮労働党総書記は6月に首脳会談を行い、「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。露朝間の軍事協力をどう分析するか

 露朝間の軍事協力は2023年8月、(北朝鮮北東部の) 羅津 ラジン港から(ロシア極東の)ドゥナイ港に武器取引と推定される活動が最初に確認された。昨年9月の(首脳会談に合わせた)正恩氏の訪露前後から本格化した。

 北朝鮮からロシアに運ばれたコンテナは7月15日時点で少なくとも1万1000基以上で、これは152ミリ砲弾で520万発分だ。砲弾とは別に、短距離弾道ミサイル数十発程度を提供したとみている。北朝鮮は戦争物資(の輸出)でロシアを支援し、見返りに食糧、油類、軍事技術の支援を受けているとみられる。

 北朝鮮の軍事偵察衛星技術については、プーチン氏が支援を明言しており、様々な技術がロシアから入っているのは事実のようだ。ただ、その技術は打ち上げの成功に至るほど確実ではない。ロシアが良い技術を与えなかったのか、北朝鮮の元々の技術と融合する効果がなかったのかは分からない。北朝鮮は通常兵器の現代化にも関心を持っており、両国はこれについても調整しているとみている。

 露朝両国は条約を基盤とし、これまで隠密にしてきた砲弾やミサイルなどの武器取引を、露骨に実施するとみられる。北朝鮮は核兵器開発、宇宙技術と通常兵器現代化などの支援を要請する可能性があり、軍事力を強化する懸念がある。

 ロシアはウクライナ侵略に必要な砲弾やミサイルなどを北朝鮮から際限なく受けることができるようになった。北朝鮮軍の兵力要請も可能な状況になったと評価している。根拠は明かせないが、一部でそういう状況があるのは事実だ。(派遣されるのは)直接の戦闘部隊ではないとみている。最近、ロシアの国防次官が北朝鮮を訪れたことに注目している。

 韓国軍は、国民の生命と安保を脅かす全ての行為に対し、厳しく断固として対処する。武器取引や軍事技術の移転など、露朝間の協力の水準と内容を見ながら、ウクライナへの武器支援の方針を再検討する方針だ。

 露朝両国は今回の条約締結で、軍事協力を中心とした関係の格上げと反欧米の連帯強化を公式的に誇示した。北朝鮮はロシアという後ろ盾を確保し、抑止力と軍事技術を強化する機会を得た。ロシアは北朝鮮の支援を明文化し、軍事協力拡大の基盤を整えた。

 両国は当面の必要によって犯罪的に結託したが、中長期的には得たものより失ったもののが方が大きく、非常に大きな損害になるとみている。北朝鮮は韓日や、インド太平洋地域の脅威を超え、世界の脅威となった。特に欧州は実際の脅威として認識するようになった。

 ロシアは軍事強国の評価を受けてきたが、北朝鮮という最貧国に武器を乞わなければならない実情が明らかになった。自らが賛成した国連安全保障理事会の制裁に正面から違反する矛盾を犯した。北朝鮮の砲弾をウクライナ戦線につぎ込める短期的な得はあるかもしれないが、ロシアのイメージが物乞い、矛盾、裏切りといった、非常に悪いものになる可能性が高い。

――米韓は7月中旬、米国の核戦力の朝鮮半島での運用に関するガイドライン(指針)を交わした

 韓国はガイドラインをもとに、朝鮮半島での米国の核運用に関する情報を共有し、協議し、米国の核戦力と韓国の通常戦力を統合して、訓練や作戦を行うことになった。韓米同盟が名実ともに、核を基盤とする同盟に格上げされた。

 北朝鮮が核攻撃をするという決心をすれば、北朝鮮が耐えられない決定的な対応を、即座に、圧倒的に行う。圧倒的というのは、北朝鮮の政権が終わりを迎えることを意味する。いかなる北朝鮮の脅威に対しても、緊密かつ効果的に対処できる態勢を構築した。

――韓国内では露朝の軍事協力進展などを受け、一部政治家などが独自の核武装や戦術核配備を主張している

 露朝の軍事協力強化による韓国国民の憂慮と、一部で提起されている核保有に関する主張は把握している。だが、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対応するための最も現実的で望ましい解決法は、米国の拡大抑止だ。

 今回のガイドラインを通じ、米国の核戦力に朝鮮半島での任務を割り当て、朝鮮半島での核運用の過程で韓国の役割を拡大し、拡大抑止の実行力は画期的に高まった。

――米国ではバイデン大統領が大統領選からの撤退を表明した。トランプ前大統領が再選した場合の影響は

 国会議員や自由な学者であれば見解は明らかにできるが、今は(国防相として)米大統領選の予測や影響を話すのは難しい。

 韓国は自由民主主義の価値を共有する国の中で、最も大きな安保上の役割を担っている国の一つだ。冷戦後も最前線に立つ役割に変化はなかった。強固な防波堤の役割を担うことで、多くの国が恩恵を受けており、アメリカも例外ではない。費用分担も小さくなく、米国製の兵器も購入している。

 また、世界のサプライチェーンで韓国は不可欠な地位にあり、こうした点から見ても、韓国のような同盟国の安全は米国の国益に合致する。韓国は韓米同盟で大きな恩恵を受けているが、それは米国も同じだ。最近の韓国の防衛産業まで考えると、韓国の戦略的価値は非常に高くなっている。

 日米同盟についても本質に大きな違いはなく、韓米日の安保協力、韓日間の堅固な防衛交流などで下支えすれば、米大統領選の結果に関係なく、韓米日の安保協力は前進し続けると思う。

―― 尹錫悦 ユンソンニョル 政権は防衛産業に力を入れている

 北朝鮮の軍事的脅威を考えると、防衛産業は国家安保の次元で極めて重要だ。韓国の防衛産業は北朝鮮軍の脅威に常に対応する実戦型の武器体系で、性能に秀で、大規模な運用経験があり、納品が迅速で、価格は合理的だ。合同訓練を通じて米国や北大西洋条約機構(NATO)の兵器との相互運用性も証明するなど、韓国軍だけの強みを通じた競争力が認められ、重要兵器輸出国の一つとして足場を固めつつある。雇用の創出、技術発展、競争力強化にも役立っている。

――北朝鮮は戦術核兵器と主張する短距離弾道ミサイル「超大型ロケット砲」の発射実験を繰り返している。核・ミサイル開発の現状は

 超大型ロケット砲、(変則的な軌道で飛び迎撃が難しい)新型戦術誘導ミサイルなどは、開発完了段階と評価されるが、実戦配備されたかについては確認できてない。最近の超大型ロケット砲の発射は、実戦配備を準備している兵器の精密性と同時発射能力を誇示する目的だったとみられる。

 開発中のミサイルの射程は朝鮮半島だけでなく、在日米軍基地がある地域も含まれており、有事には核使用を試みる可能性がある。

 大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、これまでの発射実験で米本土に到達する飛行能力を一定程度確保したと評価している。だがこれまでの発射は全て高角度で、通常軌道で発射したことはない。核心的な技術である大気圏再突入の検証はできていないとみられる。

 核実験については、北朝鮮は 豊渓里 プンゲリの核実験場でいつでも実験可能な状態を維持している。核実験の時期は北朝鮮指導部の決心により変わるが、内外の状況を考え、有利で最適な時期を選択するとみられる。韓米は準備の兆候を綿密に監視している。

 北朝鮮は核戦力の法制化、核の運搬手段の多様化など、核能力高度化のための活動を活発に行っている。こうした行動を見れば、北朝鮮に非核化の意思は全くなく、今後も自ら非核化の措置をとる可能性はないとみている。

――韓国軍は南北軍事境界線付近で、北朝鮮の体制批判を行う拡声機による宣伝放送を再開した

 拡声機による宣伝放送は、私たちが予想するより北朝鮮が負担に感じている。北朝鮮は外部に脅威があると(住民に)ウソをついて体制を維持している。内部からの崩壊を最も深刻な脅威と見ているためだ。崩壊の最も危険な要因が、自由で幸せな韓国という存在だ。その実情が住民の耳に入るのが一番怖いのだ。

 北朝鮮はゴミなどをつり下げた風船を韓国に飛ばしているが、こうした低質な挑発で、韓国の民間団体による(北朝鮮の体制を批判する)ビラ散布を阻止しようとしている。金正恩政権が外部の情報を最大の不安定要因と認識していることを示している。

 北朝鮮の住民は世界で一番の弱者と言える。彼らに幸福と人権を保障するために、金正恩政権に政策を変えさせなければならない。拡声機による宣伝放送は北朝鮮を攻撃に駆り立てるものではなく、人権と平和のためだということを日本にも分かってほしい。

 北朝鮮にとって韓国が最大の脅威であることに変わりはない。北朝鮮は朝鮮戦争以降、3000回以上の計画的な軍事挑発を行ったが、韓国が先に挑発したことは一度もなく、偶発的だったこともない。北朝鮮は、勝算があり、利点が多いと考える時に挑発する。

金与正 キムヨジョン 党副部長は今月16日、韓国の民間団体によるビラ散布を非難する談話で、韓国への対応の変化を予告した。地雷の埋設、無人機を使ったビラ散布、全地球測位システム(GPS)の妨害、サイバー攻撃などの「グレーゾーン」挑発や、韓国側のビラ散布を行う風船の撃墜、風船を飛ばす拠点の銃撃や砲撃を行う可能性もあり、関連の動向を注視している。

 尹錫悦政権の北朝鮮の挑発抑止の核心は「力による平和」だ。挑発により得る利益より失うものが多いということを敵に明確に認識させ、挑発しようという考えを起こさせない。北朝鮮の挑発の脅威に屈して得る「偽の平和」は、韓国の安保を大きな脅威に陥れる。

 韓国軍の報復の原則は「即座に、強力に、最後まで」だ。挑発には徹底的に報復する。

――中国にはどう対応していくのか

 非常に敏感な問題で、発言が難しい分野だが、大きな原則は昨年の韓米日首脳会談で合意した「自由で開かれたインド太平洋」だ。第2次世界大戦を経て人類が悟ったことは、力による現状変更をしてはならないということだ。つまり、戦争という手段で現状を変更するなということだ。全ての国が力による現状変更をしない、もし誰かが行った場合には共同対応しなければならないという原則を確立しなければいけない。

――台湾有事の際の韓国の対応は

 韓国が朝鮮半島の安定と平和を守ることが(台湾海峡の安定に)かえってプラスになる。台湾有事が起きた際、米国や日本など多くの国が原状回復の努力に集中するだろう。それを北朝鮮が利用して局地戦を起こすような悪いシグナルを与えないよう、韓国軍や在韓米軍が朝鮮半島をしっかり守ることが、台湾海峡の安定と平和を守ることに役立つという考えだ。

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