「日本勢もEVへの投資判断を早く」「米中による貿易戦争は当面変わらず、日本勢にとって好機に」…インドネシア商工会議所のアルシャド・ラシッド会頭
読売新聞 / 2024年7月25日 13時16分
インドネシアは、日本車のシェア(占有率)が9割を超え、「日本車の牙城」とされる。最近は、電気自動車(EV)への移行を契機に、中国や韓国勢も進出している。インドネシア商工会議所のアルシャド・ラシッド会頭に現地の状況を聞いた。(聞き手・向山拓)
韓国・中国、決断が非常に速い
――インドネシア市場では、日本車の人気が高い。
「1970年代から、日本勢が投資を進めてきた影響が大きい。日本メーカーの技術力は優れており、インドネシアで自動車産業のエコシステムを形成した強みがある。
インドネシアでは、ガソリンなどの燃料への補助金と、温室効果ガスの排出量を削減することが求められており、EVが必要になっている。技術の進歩は進んでおり、将来的には水素の活用もあり得るが、時間がかかる。まずはEVが先に来るとみている」
――EVの導入を契機に、中国や韓国メーカーが躍進している。
「理由は非常に明快だ。韓国勢はEV投資をいち早く決め、中国メーカーも投資を打ち出している。韓国の現代自動車や中国のBYDだ。彼らは決断が非常に早い。
一方で、日本勢は決断が遅いのではないか。まだ日本勢が負けているわけではないが、取り残されてはいけない。世界は変わった。EVへの投資判断を早めるべきだ」
投資すれば、新たなエコシステム構築可能に
――インドネシアでEVを生産するメリットは何か。
「インドネシアには、EV電池に必要なニッケルやボーキサイトなどが豊富にある。投資をすれば、新たなエコシステムが構築できる。それこそが、投資の必要な理由だ。今は鉱物資源への投資を行っているのは中国企業ばかりだが、日本企業だってできるはずだ。
米中による貿易戦争も重要な要素になるのではないか。個人的な予測では、貿易戦争は当面10年、状況が変わらないとみている。この間は、米国向けと中国向けという二つのサプライチェーン(供給網)を持つことが求められる。米国が中国製EVや電池、鉱物資源を求めていないことは明確になっており、だからこそ、日本勢にとっての好機でもある」
――今回の来日では、斎藤経済産業相とも会談した。
「インドネシアは独立から100年になる、2045年までに世界第5位の経済大国になることを夢見ている。8%の経済成長を達成する大きな夢だが、我々は1970年代に経済成長を果たした日本に学びたいと思っている。
斎藤経産相に伝えたのは、インドネシアと日本の協力について、単に政府と政府の枠組みだけで考えないでほしいということだ。経済成長には、両国の民間企業同士の連携も欠かせない。大企業だけでなく、日本の産業を支えている中小企業にとっても魅力はある。我々の要望について、日本政府の理解が得られたと考えている」
◆アルシャド・ラシッド氏 1970年、ジャカルタ出身。約9万の会員が加盟するインドネシア商工会議所の会頭を2021年から務める。インドネシアを拠点とする総合エネルギー企業、インディカ・エナジーのプレジデント・ディレクターも兼任する。
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