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オリンピック開幕目前のパリ、警備規模は「戦後最大」…市民憩いの場に軍車両がずらり

読売新聞 / 2024年7月24日 22時14分

大型バスに乗って到着したフランス軍の兵士たち。肩からは銃をかけている(7月9日)(C)Ministere des armees

 数日後に迫ったパリオリンピックの開幕に向けて期待が高まる一方で、気がかりなのが安全な大会運営です。フランス政府が発表するテロへの警戒水準は3月下旬以降、3段階のうち最も高い「テロが切迫」に引き上げられたまま。セーヌ川で開会式が行われる26日には、警備要員として警察官や憲兵ら計4万5000人を動員するなど、フランス政府は大規模な警戒態勢を敷きます。

 その一翼を担うフランス軍が一時的な駐屯地としているのが、パリ南東部に広がる「ヴァンセンヌの森」です。ジョギングや散策などを楽しむパリ市民の憩いの場は今、少し雰囲気を変えています。駐屯地の外周には、五輪警備の作戦名「オリパラ2024 歩哨作戦」のロゴマークが入った軍関係のワンボックスカーがずらり。事情を知らずに市民が近くで車を止めていると、銃を持った兵士が直ちに駆けつけ、速やかな車両の移動を求めます。

 フランス軍事省などによると、首都に設置された軍事キャンプとしては第2次世界大戦後、最大とのこと。パリはかつてナチス・ドイツに占領され、レジスタンス(抵抗運動)や連合軍の反攻により解放されたという過去を持ちます。「戦後最大」のうたい文句から、フランス軍の意気込みが感じ取れます。

 敷地の広さは3万1000平方メートルで、東京ドームの7割程度。フランス全土から部隊が集められ、最大で4500人が集結する予定です。そこには、外国籍の志願兵組織として知られる「外国人部隊」も含まれます。プレハブ小屋に似た1棟15人が定員の仮設宿泊施設は計330棟。敷地外周のフェンスには「軍事区域 立ち入り禁止」「写真撮影禁止」などの表示板が掲げられているため、内部にカメラを向けることは許されませんが、軍事省からの提供写真でその様子は多少、うかがい知ることができます。

 キャンプの売りは何と言っても、その立地の良さ。パリ軍事司令官のクリストフ・アバド将軍は「ここはまさにパリ中心の市街地」と説明します。緊急事態が発生した場合でも、パリの競技会場ならどこでも30分未満で駆け付けることができるそうです。

 2か月余りの設営作業を経て、開所したのは7月5日。長丁場の任務に当たる兵士に高い士気を保ってもらおうと、設備の充実にもこだわりました。一度に2100人が食事できる大型食堂を設けたほか、オリンピック中継を大勢で見られる大型スクリーンも設置。Wi―Fi(ワイファイ)を完備し、宿泊棟にはエアコンを備えました。キャンプの広報を務めるジェローム・デュパックドマルスリ海軍少佐は「兵士には、最高の状態で任務に当たってほしいと思っていた。海外の軍事キャンプよりも快適な生活が送れている」と力説します。町中の至る所にカフェがあるパリらしく、コーヒーを楽しめるちょっとしたテラスも用意されているそうです。

 市民が安らぎを求めて訪れる場としては、やや不釣り合いな物々しさですが、休日の散策に訪れていたセドリック・ファーブルさんは「ちょっと迷惑な感じもするけれど、それほどでもないかな。7~8月は、パリを離れてバカンスに出かける人も多いから」と言います。安全対策への理解を広げつつ、何事もなくオリンピックが開かれることを、ただただ祈るばかりです。(デジタル編集部 深井千弘)

 パリオリンピックを巡る様々な話題を、ユニークな視点で随時お届けするコーナーです。

ふかい・ゆきひろ 1977年生まれ。2000年に入社し、地方支局や運動部などを経て、2022年からデジタル編集部。オリンピックの取材は3年前の東京大会に続いて2度目。好きなフランス映画は「最強のふたり」。

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