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詐欺広告を垂れ流し、被害女性「メタの怠慢を追及したい」

読売新聞 / 2024年7月25日 5時0分

自社の名前をかたった偽広告の画面を示す和里田社長(17日、東京都千代田区で)=富永健太郎撮影

[偽サイトの罪]<中>

 「あれ、こんな広告出していたかな」。フェイスブック(FB)を閲覧していた手が思わず止まった。

 ネット証券大手、松井証券の 和里田 わりた聡社長(53)が自社のなりすまし広告に気付いたのは昨年春。刷新したばかりの会社のロゴが使われ、「株式投資で勝ち続ける」手法がチャート図とともに掲載されていた。タップすると、LINEの友だち登録を勧める画面が現れた。

 「これは絶対おかしい」。急いで広告の担当部門に確認すると、「これは詐欺です」との答えが返ってきた。今年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)に便乗した新たな投資詐欺だった。

 その後も偽広告を見つけてはFB運営会社のメタに削除申請を繰り返したが、被害は収まらなかった。申請は100件を優に超え、メタから明確な回答を得られたことは一度もないという。自社のサイトで注意喚起を行う以外有効な手立てはなく、「せっかく新しくしたロゴを詐欺に使われ、自分たちの名前を傷付けられた」と悔しさをにじませる。

 警察庁によると、SNS型の投資詐欺被害は1~5月に3049件確認され、前年同期の約6倍だ。被害総額は約430億円と約9倍に膨れ上がっている。

 実業家の前沢友作氏や堀江貴文氏、ジャーナリストの池上彰氏ら著名人になりすまして投資を呼びかける偽広告も目立つ。被害者に最初に接触するのに使われたSNSはFBとインスタグラムで43%を占めた。

 「メタはこれだけ被害が出ているということを知りながら、偽広告を垂れ流している。内容もちゃんと確認しないという企業の怠慢を追及したい」

 偽広告による投資詐欺にあった神奈川県在住の60歳代女性は4月、他の被害者とともにメタの日本法人を相手取り、損害賠償を求める訴訟を神戸地裁に起こした。

 昨年9月、FBで外資系投資会社の特別顧問をかたる無料講座の広告を目にした。「老後の資金が足りるか不安で、どうしても増やしたい」との思いからクリックしてしまい、LINEグループに誘導された。

 そこで言葉巧みに投資を勧められ、指定された口座に15回にわたり計2000万円を振り込んだ。いざ出金しようとすると難癖をつけて拒まれ、だまされたことに気付いたという。自宅を担保にローンを組んだ女性は、自宅の売却を余儀なくされた。

 読売新聞などのデータ分析で、メタのSNSに掲載された著名人のなりすましとみられる投資関連広告は99%超がLINEに誘導する内容だったことが判明している。SNS事業者に対策の徹底が求められる。

 政府も省庁横断での対策に乗り出した。経済産業省は6月、メタなどへの聞き取りを実施。同社が広告審査を人工知能(AI)などに頼っており、本人確認手続きも不十分として改善を求めた。

 ネット上の偽情報などへの対応を検討する総務省の有識者会議も7月16日、SNS事業者に広告審査の強化などを求める報告書案をまとめた。広告の審査基準を策定・公表し、掲載停止を申請する仕組みを整備することが柱だ。

 有識者会議メンバーの森亮二弁護士は「これまで法制度がなく、事業者への事実上のお願いだけで進めてきたのが間違いだ。膨大な制裁金を取られる恐れがなくては(巨大IT企業の)米国の本部も動かない」とし、厳しい罰則を含む法整備の必要性を指摘する。

 国民生活センターは、SNS上で勧誘を受けた場合はまず詐欺を疑い、振込先の口座を指定されても絶対に振り込まないよう注意を呼びかけている。

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