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美輪明宏が語る人生観……「正負」は隣り合わせ、何かを得れば何かを失う

読売新聞 / 2024年7月25日 17時0分

今日の幸せを恐れない勇気がほしい夏の朝に

カリスマキリンへの道

 阿佐田哲也の名で『麻雀放浪記』などの傑作を残した作家、色川武大(1929~89年)の有名な著書に『うらおもて人生録』があります。この生き方指南の書の中で、彼は人生を相撲にたとえ、理想は<九勝六敗>なのだと説きました。

 十五勝〇敗の大勝ち狙いは、大負けを招く。人生の勝ちと負けの帳尻は合っているというのです。

 歌手、美輪明宏さんの新刊『私の人生論』(毎日新聞出版)に驚いたのは、このカリスマが色川と似た人生観を持つことでした。

 <私たちが暮らす現実社会では、良いことも悪いことも起きているのです。何かを得れば何かを失う。これが「正負の法則」です>

 長く第一線で活躍する人は、ずっと自分だけが勝ち続けられないことを知っているのでしょうか。

 キリンは以前、人生「九勝六敗」説に傾倒していました。この考えは、自分の気持ちが前向きな時はとても有効です。仕事で良いことがあれば、次は悪いことが起きるかもしれないと気を引き締められます。失敗すれば、今度はいいことがあるさと気分転換できます。

 ただ、心を黒い闇に支配されているときはいけません。人生にこんないいことばかり続くはずがない、次は悪いことが起きる、きっと来る(キリンだけど)……と未来の負けばかりに目が向きます。

 でも、美輪さんも「正負の法則」を唱えている。本著を熟読し、もう一度この説と向き合うことにしました。読者からの人生相談と返答、様々な人生訓が並びます。<孤独とは物事を深く考え 聡明 そうめいになるチャンス>。こんな言葉を、ふと見つけました。

 つまり「勝ち」や「正」の合間に訪れる「負」には意味がある。「負」の試練とは、今までの状況に自分を安住させない天の贈り物です。人生の転機とするのも、不安がって自滅するのも自分次第なのです。この夏は、正の中の負、負の中の正を見つめてみます。

今月のもう一点

 向坂くじら『いなくなくならなくならないで』(河出書房新社)。死んだはずの友達と始まる不思議な同居生活。といっても、この展開はきっと想像できない。

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