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「今すぐにやめてください」心臓の病で水泳を断念した女子中学生、本多灯から粋な計らい…特別な思いで応援

読売新聞 / 2024年7月25日 11時9分

憧れの本多選手と記念撮影する安斎さん(6月30日、相模原市で)

 パリ五輪の競泳男子200メートルバタフライに出場する本多 ともる選手(22)ら日本代表を特別な思いで応援する中学生がいる。神奈川県厚木市の安斎 咲綾 さあやさん(12)。6月に心臓の病と診断され、幼い頃から打ち込んでいた水泳を断念したが、憧れの本多選手らに励まされ、前を向こうとしている。水泳部のマネジャーとして仲間を支える一歩を踏み出した。(高木文一)

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 5歳から水泳を始めた安斎さんは、レオスイミングスクール厚木校の選手コースに通い、得意の背泳ぎで全国大会を目指していた。

 小学4年の時、東京五輪で、本多選手が男子200メートルバタフライで銀メダルを獲得する姿をテレビで見た。決勝の後半で驚異的な追い上げを見せた力強い泳ぎに魅了され、「スーパーヒーローのようにかっこよかった」。自分も記録を伸ばそうと奮い立った。

 今年4月、水泳部がある中学校に越境して進学。朝練で体を鍛え、放課後には部活で練習し、夜にはスクールでも泳いだ。

 6月、思わぬ事が起こった。学校の心電図検査で引っかかり、再検査で医師から心臓病の疑いが強いと告げられた。激しい運動は厳禁と言われたが、前日までハードな練習を続けていただけに半信半疑だった。

 2日後、総合病院で精密検査を受け、QT延長症候群と診断された。脈が乱れる病で、運動などで脈が上がると失神し、心臓が止まる可能性もあるという。

 「水泳は、今すぐにやめてください」。突然の医師からの言葉に涙が頬を伝った。「こんなに頑張ってきたのに悔しい」。悪い夢であってほしいと思った。

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 6月30日、安斎さんは、相模原市の記録会の会場にいた。スクールの友人らを応援するためだ。その時、関係者に呼ばれてプールサイドに行くと、同じ記録会に参加する日本代表の本多選手や鈴木聡美選手(33)ら約10人に囲まれた。

 本多選手が声をかけてくれた。「これからもつらいこともあると思うけれど、頑張ってね」。そして、力強く手を握ってくれた。安斎さんは「これからのことを何も考えられなかった。少しだけ、元気が出ました」と笑みを浮かべた。事情を知った本多選手らによる粋な計らいだった。

 翌日、安斎さんは水泳部の顧問にこう伝えた。「マネジャーとして頑張ります」。目の前で泳ぐ部員を見るのはつらい。でも、大切にしたい思いがあった。「大好きな水泳から離れたくない。泳ぐことはできなくても、自分なりの関わり方を見つけたい」

 水泳部ではマネジャーとして練習計画を立て、プールサイドから大きな声を出して部員を励ましている。

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 心臓の病とは長期間、付き合う覚悟が必要だと医師から言われている。すでに服薬を始めており、医師や家族と話し合い、今後の治療方針を決めるという。

 父・誠二さん(45)は「厳しい現実を突きつけられた咲綾の心に希望の光を ともしてくれた」と感謝する。

 安斎さんは、本多選手らからプレゼントされた直筆のサインを自宅に飾っている。「少しずつでも自分の人生を前に進めたい。パリでは、様々な困難に直面する人を勇気づける泳ぎを見せてほしい」と話している。

 男子200メートルバタフライの予選は30日に行われる。

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