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大海原に22時間、乗員・乗客121人やっと上陸…航行不能のジェット船「常に揺れている状態」で体調不良続出

読売新聞 / 2024年7月25日 12時31分

 千葉県南房総市の野島崎沖で航行不能となり、海上保安庁の巡視船などにえい航されていた東海汽船(東京)のジェット船「セブンアイランド愛」(約280総トン)は25日午前5時45分頃、出港から22時間後に伊豆大島・岡田港に到着した。同社によると、乳幼児を含む乗員・乗客計121人にけがはなかったが、複数人が体調不良を訴えた。下船した乗客らは疲れた表情を浮かべていた。

 「やっと着いた。常に揺れている状態で、気分が悪かった」。家族4人で伊豆諸島・式根島を訪れる予定だった神奈川県厚木市の団体職員の男性(50)は、そう吐露した。

 男性によると、船は大きく揺れ、 嘔吐 おうとをするなど体調を崩す人が続出。乗客らは複数の席にまたがって横になったり、床に段ボールを敷いたりして過ごしていた。24日夕に食料や水を支給されたが、男性は「飲み物を口にするのがやっとだった」と話した。

 同社や第3管区海上保安本部(横浜市)によると、船は24日午前7時45分に東京・竹芝桟橋を出港。同10時5分に伊豆諸島・式根島に、同25分に新島に到着する予定だった。しかし午前9時10分頃、船から同社に「一部のタービンが回らない」と故障を知らせる連絡が入った。同社は船長と連絡を取りながら自走を試みたが、断念。同10時頃、野島崎沖の南西約17キロ地点を航行中、船長が海上保安庁に「油が漏れて油圧が低下し、かじがきかない」と118番した。

 その後、同庁の巡視船が午後0時25分頃から、停留できる40キロ超先の伊豆大島に向け、えい航作業を開始。しかし、ロープが切れ、民間のタグボートに切り替えた。その後、ロープがスクリューに巻き込まれるトラブルが発生し、再び別の巡視船に交代した。

 その間も船は少しずつ東に流され、午後6時時点で岡田港から東に約50キロ地点にいた。同8時頃からはさらに別のタグボートが引き継ぎ、岡田港に着いた時には夜が明けていた。

 男性の娘で会社員の女性(21)は「ロープが切れた時は陸が遠くなったと絶望した。大きな波がくると、またロープが切れたのではないかと思い、気が休まらなかった」と話した。

 船は全長約27メートル、幅約8・5メートルで、定員254人。1980年に建造され、2002年から同社での運航を開始した。ジェット船はジェットエンジンで海水を噴き出し、空気の代わりに海水から揚力を得て、船体を海面から浮かして航行する。

 元第3管区海上保安本部長で日本水難救済会の遠山純司理事長は「老朽化で圧力がかかりやすい油圧系統の部品に亀裂などが生じた可能性がある」と指摘。「ジェット船の船体は軽く、しけの海にお わんが浮いているような状態だった。波と風の抵抗を受けやすく、ロープに瞬間的な力が加わって切れてしまったのだろう。えい航は速力を落として、慎重に進める必要があった」との見方を示した。

 同社によると、船の点検は毎日行っており、今回も異常はなかったという。同社は乗船料を全額返金する方針。海保が今後、航行不能になった原因を調べる。

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