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最低賃金 大幅引き上げで成長型経済に

読売新聞 / 2024年7月26日 5時0分

 企業が人件費を抑制するばかりでは、経済の好循環の実現は望めない。最低賃金の大幅な引き上げを契機に、コストカットに偏重していた日本経済の変革を進めたい。

 厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2024年度の最低賃金について、全国平均を、現在の1004円から1054円にするとの目安をまとめた。

 引き上げ額は50円で、昨年度の43円を上回り、過去最大となった。引き上げ率は5%となる。

 最低賃金は、正規、非正規を問わず、すべての労働者に適用される賃金の下限額となる。

 物価高が続く中、物価の影響を考慮した実質賃金は、今年5月まで2年以上もマイナスが続き、家計は苦しい。大幅な引き上げで合意したことは評価できる。

 今年の春闘は、33年ぶりの高水準の賃上げを実現した。その流れを非正規労働者や中小企業に波及させる効果も期待できよう。

 審議会では、労働者側が67円の上げ幅を主張したのに対し、使用者側は23円とするように求めて、協議は難航した。

 使用者側には「過度な引き上げは、倒産や廃業を招き、地域の雇用が失われかねない」との懸念が強い。政府には、中小企業が賃上げの原資を確保できるようにする環境を整える責任がある。

 中小企業が、人件費を含めたコスト上昇分を適切に価格転嫁できるよう監視を徹底するほか、企業の生産性を向上させるための有効な施策を講じてもらいたい。

 日本は、人件費や原材料費を削減して割安な製品を販売する「コストカット型経済」から脱却していく重要な局面にある。

 価格の安さを競うよりも、賃上げや投資を進め、魅力ある商品やサービスを提供する「成長型経済」へと転換する必要がある。そのためには、企業規模を問わず、経営者が、賃金のあり方に対する意識を改革していくことが大切だ。

 政府は現在、30年代のできるだけ早い時期に「全国平均1500円」の最低賃金を実現する目標を掲げている。日本で働きたいと思う外国人を増やすためにも、欧米より低い水準にある賃金を引き上げていくことが重要になる。

 また、例年は47都道府県を経済情勢に応じ、3グループに分け、それぞれの目安を示してきた。今回は地域差の是正と底上げのため、一律に同額の50円とした。

 各地の審議会は、地域の活性化に重要だという観点から、積極的に引き上げを検討してほしい。

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