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サイト閲覧数を水増しされ、広告費詐取の被害…コンサルタント会社「代理店に丸投げダメ」

読売新聞 / 2024年7月26日 5時0分

自社の広告が適切に運用されているか確認する浜田耕輔さん(左)と柳恵理さん(不動産SHOPナカジツ名古屋支社で)

[偽サイトの罪]<下>

 ロシア、中国、米国。パソコンの画面には、想像もしていない国々の名前が並んでいた――。

 愛知県を中心に1万件以上の物件を紹介する「不動産SHOPナカジツ」(愛知県岡崎市)。マーケティング担当の浜田耕輔さん(32)が、同社のホームページの来訪者を確認すると、営業エリアと重ならない海外の人たちが、ネット広告経由で多く閲覧していたことがわかった。しかも閲覧時間はわずか数秒だった。

 異変に気づいたのは5~6年前だ。同社が広告代理店に委託して広告を配信していたエリアは、愛知県など店舗を出している地域に限定していたはず。海外から多数のアクセスがあるのは不自然だった。

 浜田さんや上司の柳恵理さん(52)が調べてみると、「アドフラウド」と呼ばれる詐欺被害に遭っていたことがわかった。ネット広告費は本来、クリック数などに応じ、広告主からプラットフォーム(PF)事業者経由で掲載先のサイト運営者に支払われるが、ナカジツでは、クリック数が機械的に水増しされる手口で詐取されていた。

 また広告が、海外のゲームサイトなどに掲載されていることも確認された。

 ネット広告の大半は「運用型」と呼ばれる方式で、無数のサイトから自動的に掲載先が決まる。幅広く配信できる一方、広告主が知らないところで違法サイトや広告効果の低いサイトに掲載される可能性がある。

 クリック数の水増しも含め、同社では広告費の3~5%が無駄になったとみられる。「気づかなかったら、もっと大きい被害が出ていた」。柳さんはそう話す。

 広告費を狙う集団の手口は進化している。近年、問題視されているのが「MFAサイト」と呼ばれる広告収入を得るためだけに作られたものだ。大量の広告が貼り付けられ、ネット上の文章や画像を寄せ集めただけの低品質なサイトだ。

 生成AI(人工知能)によって大量に作られていると指摘され、「スパイダーラボズ」の推計によると、昨年、国内企業が支出したネット広告費のうち約211億円がMFAサイトに流れたとみられる。正規の見込み客はこうしたサイトを閲覧する可能性が低いため、企業が広告費を浪費する要因となっている。

 人材サービス大手「エン・ジャパン」(東京)は、自社の広告掲載が確認されたMFAサイトを次々にブロックするなどの対策を取っている。だが同社の田中奏真執行役員(41)は「新しいサイトがどんどん作られており、まるでいたちごっこだ」と頭を悩ませる。

 ネット広告に詳しいコンサルタント会社「アタラ」(横浜市)の杉原剛CEO(最高経営責任者)は被害を減らすため、「グーグルなどのPF事業者が悪質なサイトの除外を徹底すべきだ」と指摘し、「1ページあたりの広告数に上限を設けるといった『ルール化』が必要だ」と訴える。

 その上で「広告主が代理店に丸投げではダメ。安全な配信先を集めた『ホワイトリスト』を導入するなどし、広告の配信先を管理することが重要だ」と語る。

 フィッシング、なりすまし広告、アドフラウド。複雑化する仕組みの隙をつき、金銭を狙う攻撃者に対し、国や民間の総力を挙げた対策が求められている。

 ◆アドフラウド=ネット広告の表示回数やクリック数を不正な手法で水増しし、広告費を詐取する行為。不正広告対策を手がける企業「スパイダーラボズ」(東京)が2022年に広告主に実施した調査によると、予算の最大32%がだまし取られたケースもあった。

(この連載は、社会部 狩野洋平、村上喬亮、鈴木貴暁、大重真弓、小峰翔、スタッブ・シンシア由美子、経済部 上地洋実が担当しました)

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