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張本智和・早田ひな組破った北朝鮮ペア、実は「粒高」駆使する「つわもの」だった…[伊藤条太の目]

読売新聞 / 2024年7月28日 6時35分

 パリオリンピックの卓球は27日、混合ダブルスの1回戦が行われ、世界ランキング2位の張本智和(智和企画)、早田ひな(日本生命)組は北朝鮮ペアと対戦。1-4(5-11、11-7、4-11、13-15、10-12)で敗れ、まさかの初戦敗退となった。

日本チームに衝撃

 現地時間27日から始まった卓球競技。その初日、日本チームに衝撃が走った。金メダルが期待された張本智和・早田ひな組が1回戦で北朝鮮の伏兵、リ・ジョンシク・キム・クンヨン組に1-4で敗れたのだ。張本・早田組はこれまで国際大会で優勝を重ねて世界ランキングを上げ、今大会は絶対王者の中国ペア、王楚欽・孫頴莎組に次ぐ第2シードでの参加。第3、第4シードの香港ペア、韓国ペアに対しても分がよいことから、メダル獲得は確実、金メダルも決して不可能ではないと見られていた中での敗戦だった。本人たちを含めた関係者のショックは計り知れない。

 こうしたシードの状況だけ見れば、格下に足をすくわれたように映るが、実際にはそうではない。張本も早田も大きなプレッシャーを抱えていたにしても、随所に素晴らしいプレーが見られた。しかし北朝鮮ペアは恐ろしく強く、決して格下などという相手ではなかった。

コロナ禍でランキング「なし」

 それほど強いにもかかわらずなぜシードになっていないかといえば、このぺアはコロナ禍以来国際大会に出場しておらず、二人とも世界ランキング「なし」の状態だったからだ。それが突如世界予選に登場して出場権を得たという、知る人ぞ知る要注意の存在だったのである。

 技術的なポイントとなったのが、キム・クンヨンがラケットのバック面に貼っている「表ソフト」または「粒高」と呼ばれる、通常より回転をかけにくいラバーである。トップ選手では使用者が少ないため、そのラバーで放たれる回転量が少なめのボールに対しては、わずかに反応が遅れる。そのボールに対してリ・ジョンシクが剛球を打ち込むのが北朝鮮の得点パターンに見えた。リ・ジョンシクは張本の全力ドライブすらことごとく跳ね返す凄さだった。

カギだった第4ゲーム

 試合の流れとしては、第4ゲームが勝敗を決したように思う。卓球のダブルスはテニスやバドミントンと違い、ペアの2人が必ず交互に打たなければらならない。なおかつ、どの選手のボールをどの選手が受けるのかがゲーム内で固定されており、それがゲーム毎に入れ替わるようになっている(最終ゲームの中盤でも入れ替わる)。混合ダブルスの場合、球威のある男子のボールを女子が受ける組み合わせが不利とされており、この試合では第1、第3、第5の奇数ゲームが日本ペアにとって不利な組み合わせだった。実際に張本・早田組はこれらのゲームを落としている。一方で、有利なはずの偶数ゲームは、第2ゲームを取ったものの、第4ゲームを13-15という大接戦で落とした。ゲームポイントを何度か握りながらも決めきれず、逆転を許したのが痛かった。

 敗戦のショックを引きずらず、むしろこれを集中力と体力を温存できる好機と捉え、シングルスと団体戦での奮起を期待したい。(卓球コラムニスト 伊藤条太)

 いとう・じょうた 1964年岩手県生まれ。中学1年から卓球を始め、高校時代に県ベスト8という微妙な戦績を残す。大学卒業後、一般企業に就職するも卓球への情熱やみがたくなぜか卓球本の収集を始める。それがきっかけで2004年より専門誌『卓球王国』でコラムの執筆を開始。2018年からフリーとなりYahoo!ニュースなどで執筆中。著書『ようこそ卓球地獄へ』『卓球語辞典』他。

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