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後発薬の不足 少量多品目生産の構造見直せ

読売新聞 / 2024年7月29日 5時0分

 せき止めなど身近な後発薬(ジェネリック医薬品)の不足が常態化している。後発薬メーカーの多くが中小企業で、多品目の薬を少量ずつしか製造できないことが原因だ。

 生産能力の増強に向け、業界の再編が必要ではないか。

 後発薬は、特許が切れた新薬と同じ有効成分から作られる薬で、開発費が抑えられるため割安だ。医療費の削減策として国が普及を推進した結果、今では使用される薬の8割を占めている。

 ところが2020年以降、後発薬メーカーの品質不正が相次いで発覚し、20社以上が業務停止などの行政処分を受けて供給が滞った。新型コロナなど感染症が流行して薬の需要が増えたことも影響し、一挙に品不足となった。

 厚生労働省は繰り返し業界に増産を要請している。

 だが、約190社ある後発薬メーカーは、何十種類もの薬をわずかな製造ラインで生産しているところが少なくない。急な増産に対応する余力は乏しく、現在、後発薬の3割が品薄状態にある。

 多くのメーカーが同じような薬を少しずつ作っている現状は、業界全体で見た場合、非効率と言わざるを得ない。品質の管理体制も不十分になりがちだろう。

 企業の統合や、複数の企業によるグループ化を進め、合理的な生産体制を構築することが重要だ。政府は、企業が統合した場合の税制優遇や、設備投資への補助など支援策を講じるべきだ。

 今や後発薬は医療を支える重要な基盤であり、メーカーの社会的責任は重い。薬の供給を正常化することは、業界全体の使命だと自覚してもらいたい。

 そうした積極的な取り組みは、不祥事で揺らいだ各メーカーの信頼回復にもつながるだろう。

 制度的な要因も考慮する必要がある。後発薬は、特許が切れた新薬の半額程度で発売されている。さらに、同一成分の薬を多数の企業が製造しているため、値引き競争が起きやすい。

 毎年改定される薬の公定価格(薬価)も、市場の取引価格に合わせて引き下げられ、今では1錠10円未満の薬もある。また、医療費が膨張する中、医療機関への診療報酬を確保するため、薬価は削られやすい傾向にある。

 こうした状態を放置していたら、高い品質の後発薬を作り続けることは難しくなってしまう。良質な薬を安定的に供給できるよう、後発薬を適正な価格に引き上げていくことも検討課題だ。

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