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自称「ロングキックが武器」の19歳谷川萌々子が30m決勝ゴール、ずぶとさも持ち味[編集委員の目]

読売新聞 / 2024年7月29日 6時23分

 パリ五輪のサッカー女子は28日、1次リーグ第2戦が行われ、C組のなでしこジャパン(世界ランキング7位)はブラジル(同9位)と対戦し、2-1で逆転勝ち。日本、ブラジルともに1勝1敗となった。

 ブラジルの1点リードで迎えた89分。このままでは2連敗で1次リーグ突破に赤信号が灯るというピンチで、80分に投入されたMF谷川萌々子がペナルティーエリア内でドリブルを仕掛けた。滑ったブラジル選手の腕がボールに当たる。VAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)の介入を経て、主審が下した判定はPK。これを主将のDF熊谷紗希が確実に決め、土壇場で日本が追いついた。

 ドラマはそれだけでは終わらない。後半の追加時間は8分の表示。こうなると勝利がほしい日本が96分、相手陣に攻め込むと、勢いに飲まれたブラジルDFのパスが中途半端になった。目の前にこぼれてきたボールを谷川が止めることなく、約30メートルの思い切りの良い右足のシュート。美しい弧を描いたボールは、GKの上を越えて決まる劇的な決勝ゴールとなった。

 谷川は2022年のU―17(17歳以下)ワールドカップ(W杯)で4得点を挙げ、昨年のW杯豪州・ニュージーランド大会では、フル代表の練習パートナーとして帯同した名古屋市出身の19歳。昨秋のアジア大会でも優勝に貢献した。

 JFA(日本サッカー協会)アカデミー福島を今春に出た後、WEリーグのチームを経ずに、ドイツの名門バイエルン・ミュンヘンへ加入。すぐにスウェーデンのFCローゼンゴードに期限付き移籍すると、ここでは開幕からいきなり7試合連続ゴールという素晴らしい働きを見せた。

 1メートル68とサイズがあり、U―17W杯で見事な左足のミドルシュートを決めたように、左右両足で遜色なくボールが蹴れる。自ら「ロングキック、シュートが武器」という言葉通りのプレーが、日本に貴重な勝ち点3をもたらした。本来のポジションは視野の広さを生かしたボランチだが、PK獲得の場面のように、絶望的な状況でドリブル突破を狙うずぶとさも兼ね備えている。

 この日の日本は、前半に得たPKをFW田中美南が失敗するなど、嫌な展開が続いていた。田中は今年4月に米国で行われた大会でブラジルと対戦した際にもPKをGKに止められた。嫌な記憶を消したかったのか、再びキッカーを務めた勇気は立派だが、その時とは逆を狙ったシュートはコースが甘く、GKにキャッチされた。彼女にPKキッカーを任せたベンチワークは反省が必要だろう。

 ともあれ、昨年まで高校生だったホープの活躍で、日本は1次リーグ突破へ前進した。初戦のスペイン戦で負傷したDF清水梨紗に代わってこの日起用された守屋都弥が、左サイドを何度も上下動して、好機を演出したのは明るい材料だ。

 失点のきっかけとなった、谷川と同学年のDF古賀塔子のやや不安定なパス回しや、日本の心臓である長谷川唯、長野風花のMFコンビがなかなか攻撃に絡めない点など、課題はあるが、次のナイジェリアは、グループ内で世界ランキングが一番低い相手。ここで確実に勝って、ベスト8入りを果たしたい。(編集委員 川島健司)

かわしま・けんじ 1963年、東京都生まれ。87年入社。宇都宮支局、地方部を経て91年に運動部。97~2001年にはロンドンを拠点に主に欧州のスポーツを取材。運動部デスク、部長を経て、14年から編集委員。17~21年は、東京オリンピック・パラリンピック準備室長を兼務した。サッカーのワールドカップは2022年カタール大会など男女合わせて計7大会を現地取材。

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