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「マッチョなのにかわいい」泣き虫なっちゃんが「金」、角田夏実選手の雄姿を見守った親友の目に涙

読売新聞 / 2024年7月29日 14時2分

 「泣き虫なっちゃん」が夢の舞台で世界の頂点に立った。パリ五輪の柔道女子48キロ級で27日(日本時間28日)、千葉県八千代市出身の角田夏実選手(31)が金メダルに輝いた。学生時代の右膝の大けがなどを乗り越えてつかんだ栄冠。「本当にここを目指してきた」と喜びをかみしめた。

 決勝戦ではモンゴルの選手と対戦した。試合時間残り1分余りで、得意のともえ投げで技ありを奪い、その後も寝技に持ち込むなどして攻め続けた。

 準決勝以降は対戦相手に警戒され、ともえ投げを封じられる場面もあった。それでも「最後まで自分を信じて戦おう」と攻めの姿勢を貫き、最後も伝家の宝刀で勝負を決めた。

 初出場の五輪で、「いつもの大会と違ってプレッシャーや不安が多かった」。金メダルが決まっても、あまり表情を崩さなかったが、畳を下りてコーチと抱き合うと目に涙を浮かべた。

 小学2年の時、八千代署のチビッ子柔道クラブに通い始めた。クラブでの指導にも携わった父の佳之さん(60)は、「小学校に上がった頃、言いたいことも言えなかった。何か自信を持たせようと連れて行った」と振り返る。

 身長は学級の前から1、2番目。大会で負けては泣き、「泣き虫なっちゃん」と呼ばれた。柔道をやめようと思ったこともある。

 それでも、母の 五都子 いつこさん(64)から「せっかくだから黒帯を取ろうよ」と促された。

 「できるだけ長く柔道を続けたい。私を育ててくれたのが柔道だから」。そう考え、中学生になっても柔道を続けた。

 中学2年で全国中学校柔道大会に出場したが、背負い投げで1回戦負けを喫した。試合開始からわずか13秒のことだった。悔しくて、柔道場が強化選手の練習場所になっていた八千代高校に進学した。

 「自分の意思で柔道を楽しんでやっている」。同高で監督として角田選手を指導した石渡正明さん(61)はこう回想する。同高の柔道部は関節技も教える。ともえ投げからの腕ひしぎ十字固めという「勝ちパターン」の原型が生まれた。

 東京学芸大学4年だった2014年、練習中に右膝の前十字 靱帯 じんたいを断裂した。父の佳之さんが心筋 梗塞 こうそくで入院した時期だ。同大柔道部で当時監督だった射手矢岬さん(63)は「お父さんの検査結果が気になり、集中できなかったのだろう」と推察する。

 了徳寺大学に職員として就職した15年、右膝を手術した。リハビリや筋力トレーニングに励むが、実家に帰ると「クビになる」が口癖だった。

 ただ、この経験が転機にもなったようだ。了徳寺大職員柔道部の監督だった山田利彦さん(54)は「強化選手でもなく、貯金もない状態で危機感があった。それがいい方向に行った」と語る。山田監督の勧めで階級も52キロ級から48キロ級に下げた。

 今大会、日本勢としては初めてのメダル。表彰台の一番高いところで「君が代」を聞くと、ボロボロと大粒の涙をこぼした。

 父の佳之さんは試合会場に駆けつけた。母の五都子さんや姉の真実さん(36)らと金メダル獲得を見届けると、「うれしいの一言。よくやったと褒めてあげたい」と話した。

 角田選手は現在、SBC湘南美容クリニックに所属する。柔道部の金丸雄介監督(44)は市川市内の自宅でテレビ観戦。「日本選手団の先陣を切り、苦しみながらよく戦った」と賛辞を贈った。

地元・千葉県八千代市でPV、430人沸く

 角田選手の地元・八千代市の市民会館小ホールでは27日夕~28日未明、パブリックビューイング(PV)が行われた。決勝戦には約430人が集まり、八千代高校時代の親友で大網白里市の桜井莉恵さん(32)は、「なっちゃんが活躍する姿に勇気や力をもらった」と声を弾ませた。

 高校生の頃、桜井さんは角田選手の自宅に泊まりがけで遊びに行った時、筋トレやランニングを怠らない姿を目の当たりにした。修学旅行の宿泊先でも、トレーニングを欠かさなかったという。

 「マッチョなのにかわいい。腕の筋肉はムキムキだが、顔も内面もかわいい。笑顔がすてきで優しく、一緒にいて楽しい女子」。桜井さんは角田選手をこう評する。金メダルを決めた後、角田選手につられるように目に涙を浮かべていた。

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