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「ブルーマリッジ」カツセマサヒコさん 性差別と無自覚、省みる

読売新聞 / 2024年8月2日 15時30分

颯爽 さっそう とした人だ。7、8年ほど前、ツイッター(現X)に投稿した妄想ツイートが人気を呼び、「タイムラインの王子様」の異名を取った。デビュー作『明け方の若者たち』から約4年。「結婚と離婚」「ハラスメント」をテーマに物語を紡いだ。

 食品専門商社の若手人事部員として労務環境の改善に取り組み、年上の彼女にプロポーズした守。勤続30年目にして部下へのハラスメントが問題化し、妻には愛想を尽かされて家を出て行かれた土方。物語は、2人の視点を交互に重ねながら、仕事やジェンダーに対する世代間の温度差を浮かび上がらせていく。

 自身にけじめをつけるかのように筆を執った。「僕のような男性は『生きやすさ』を享受してきた側。その中で生まれた怠慢や加害と決別したいと思った」。世間で性差別やハラスメントを告発する声が大きくなる中、かつての恋人に対する発言や、いじめを傍観した過去など、苦い思い出が掘り起こされたという。

いつの間にか更新された価値観 それに裏切られたやりきれなさ

執拗 しつよう 叱責 しっせきや飲み会の強要を始めとするハラスメントを調査される土方は、守らの聞き取りに憤る。〈そうやって俺も育てられてきたし、俺たち営業は、いつの時代もそうして体張って、ここまで会社を支えてきてんだよ〉。いつの間にか更新された価値観。それに裏切られた土方のやりきれなさが深く残響する。

 「絶対的な正義が常に存在するわけではなく、時代によって移ろいでいく。彼は時代の被害者でもある。自分の加害をどう受け入れていけばいいのかを書いていった」

 かつての王子様は、結婚十数年目で、家庭では家事をこなす。「女性の社会進出って言われるけど、男性の家庭復帰が本当は鍵を握ってると思います」。眉にかかった前髪の下から優しい目が のぞき、面はゆそうに笑った。(新潮社、1760円)真崎隆文

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