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日系ブラジル人 苦難と努力の歴史が報われた

読売新聞 / 2024年7月30日 5時0分

 移民先のブラジルで不当な扱いを受けた日本人の名誉を回復する、歴史的な判断である。日本とブラジルの関係を更に深める契機としたい。

 ブラジル政府の諮問機関である恩赦委員会が、第2次大戦中や戦後に行われた日本人移民らへの迫害について、初めて公式に謝罪した。

 先の大戦でブラジルは連合国側につき、日本は敵国となった。

 恩赦委は今回、サンパウロ州サントスの日系移民約6500人がスパイの疑いで住む場所を追われたことや、戦後も日本の敗戦を信じない日系人172人が「狂信的なテロリスト」として収監されたことを、人権侵害だと認めた。

 アルメイダ委員長は「あなた方の祖先が受けた迫害や人種差別について謝罪する」と述べた。

 戦後80年近くが経過し、実際に迫害に遭った当事者は少なくなった。それでも、ブラジル政府が過ちを認め、名誉回復を図ったことは、評価できる。

 昨年1月、元軍人で右派のボルソナロ前大統領から、左派のルラ大統領に政権交代し、過去の人権侵害について積極的に検証するようになったことが大きい。

 日本からブラジルへの移住は1908年に始まり、いまや約270万人と、世界最大の日系人コミュニティーを形成している。しかし、戦中戦後の苦難の歴史はほとんど知られてこなかった。

 迫害された移民の多くが、再び排斥されることを懸念し、口を閉ざしてきたためだ。今回は、日系3世の男性らが、賠償の要求は見送り、迫害認定と謝罪の実現に絞って運動を行った。

 日系人は差別を乗り越え、政財界や芸術、農業など幅広い分野で戦後ブラジル社会に貢献してきた。こうした地道な努力が、ブラジル政府による「負の遺産」の清算を後押しした側面もある。

 ルラ政権は、日本との連携強化に意欲を示す一方で、経済面では中国との関係を重視する。中国はブラジルの最大の貿易相手国で、両国は新興国グループ「BRICS」に加わる。

 日本との貿易総額は近年、縮小傾向にあったが、アマゾンの森林保護などの環境分野で、日本の技術や資金への期待はなお高い。

 日本とブラジルは、国連安全保障理事会改革を目指す4か国(G4)のメンバーでもある。グローバル・サウスと呼ばれる新興・途上国の大国であるブラジルとの絆を生かし、国際社会の安定に寄与していきたい。

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