全国学力テスト 読み書き苦手は放置できない
読売新聞 / 2024年7月30日 5時0分
SNS普及の影響だろう。短文でのやり取りが広がり、長い文章を読んだり、書いたりする機会が減っている。子供たちが活字に向き合う環境を整える必要がある。
文部科学省が、小学6年と中学3年を対象に実施した今年の全国学力テストの結果を公表した。
国語と算数・数学のうち、中学の国語は平均正答率が58・4%にとどまり、過去最低だった。「話す・聞く」「書く」「読む」の技能別では、「読む」の正答率が特に低かった。出題形式別では、記述式の成績も悪かった。
文科省は「出題内容は毎年異なり、過去との単純比較は適当でない」としている。しかし、識者らの間では近年、子供たちの読解力や文章作成力に問題があると繰り返し指摘されてきた。
原因をしっかりと分析する必要があるが、その結果が出るまで現状を放置しているわけにはいかない。まずは読書や作文の指導を通じて、読解力や文章力の向上を急がねばならない。
子供たちがSNSや動画ばかり見ていて、本を読まないとの声が学校現場から多数上がっているのが現状だ。短文や絵文字によるコミュニケーションに慣れ、長文の読み書きに苦痛を感じている。
中学の記述式問題の一部は、無解答率が15%に上ったのも、こうした状況と無縁ではあるまい。
国は、教育のデジタル化を進める「GIGAスクール構想」を打ち出し、2021年度までに、ほぼ全ての児童生徒に1人1台の学習用端末を配布した。
今回テストを受けた中3は、小学校の高学年から専用の端末に親しんできた世代にあたる。この影響も小さくないのではないか。
端末を家に持ち帰り、動画の視聴やゲームに長時間費やしているという問題が各地で報告されている。親の苦情を受けて、自宅での使用時間を各家庭で制限できるようにした自治体もある。
テストと同時に実施されたアンケートでは、小学生の2割、中学生の3割が1日3時間以上、SNSや動画視聴をしていると回答した。こうした児童生徒は、勉強時間が短く、就寝時間なども不規則であることがわかった。
GIGAスクール構想は、コロナ禍で端末の配布を急いだため、利用状況や教育効果などが不明確なままになっている。これを機に効果と課題を検証すべきだ。
文章を読み、考える力は、人間としての知の基礎である。活字離れを食い止める対策が急務だ。
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