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地味でも世界で戦えた、初出場の舟久保遥香…寝技柔道を貫き銅メダル

読売新聞 / 2024年7月30日 13時40分

柔道女子57キロ級3位決定戦でブラジルの選手を攻める舟久保遥香選手(29日、パリで)=池谷美帆撮影

 パリ五輪の柔道は29日、男女各1階級が行われ、女子57キロ級の舟久保遥香(三井住友海上)は準々決勝で前回銀メダルのフランス選手に敗れたが、3位決定戦でリオデジャネイロ大会金メダルのラファエラ・シウバ(ブラジル)を延長戦の末に破り、銅メダルを獲得した。

 派手さはなくて地味。それでも世界で戦えることを証明した。初出場の柔道女子57キロ級の舟久保遥香選手(25)は、不器用だと自覚する。自分の生きる道にした寝技を磨き上げ、粘り抜いた末に銅メダルを手にした。(蛭川裕太)

 3位決定戦の序盤は、ブラジル選手の攻勢を耐える。相手が倒れれば、寝技で体力を削った。延長も含めて9分超。相手の反則負けで勝利をたぐり寄せ、畳を降りると涙をこぼした。

 「不器用で普通の子が10回で覚える技を20回、30回やってもできなかった」。山梨県の「富士学苑中学・高校」の監督、矢崎雄大さん(44)は笑って振り返る。

 誰にも負けない資質を持っていた。つらい練習も手を抜かず、最後まで全力でやり抜く精神力。右脚のケガで稽古ができない時、取り組んだのが懸垂だった。

 毎日3時間、ひたすら鉄棒にぶら下がった。手に血まめができるとテーピングを巻き、それでも滑れば軍手をはめて続けた。1日計1000回。慣れると、重りのベストを着た。

 全国的には全く無名だったが、「五輪で金メダルを取る」と公言した。矢崎さんは言う。「笑われても自分を信じていた。だから、今まで見てきた誰よりも勝負への執念があった」

 出稽古先では、真っ先に一番強い相手に向かった。長野県の合宿の際は、今大会で世界王者になった出口クリスタ選手(28)(カナダ代表)に挑み、何度畳にたたきつけられても、ひるまなかった。

 中学3年になると、矢崎さんから寝技を徹底的に仕込まれた。懸垂で鍛えた腕力に、地味なことにも向き合える根性、そして執念。「寝技師」に必要な素養を兼ね備えていた。

 「できないことが悔しいし、すぐにできないからこそ頑張れる」。練習後も先輩や同級生をつかまえ、特訓した。「お前は、一度身につければ忘れない」。矢崎さんの言葉を励みに体勢や襟をつかむ位置、確実に仕留める方法を研究した。

 食事量を増やす「食トレ」で体も大きくなり、寝技を武器に全国大会で優勝。高校でも世界の舞台で活躍した。矢崎さんは大会前、こうエールを送った。

 「不器用でセンスはないし、華やかな技もない。それでも、努力で勝つことができると証明すれば、多くの人に夢を与える」

 金メダルを逃し、悔しさもにじませた舟久保選手。「絶対に心を折ってはいけないと思っていたので。最後まで我慢して戦った」。己の柔道を貫き通した。

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