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九州豪雨の故郷の被害に衝撃を受け気象庁職員に…「自治体や住民と危機感共有、努力したい」

読売新聞 / 2024年7月31日 11時0分

モニターに映した天気図で今後の天気の見通しを立てる那須さん(宮崎地方気象台で)

 九州豪雨で被害を受けた熊本県錦町出身の那須 たいきさん(25)は、豪雨から住民を守ろうと気象庁職員を志した。入庁して2年、宮崎地方気象台(宮崎市)に配属され、気象情報の発信に力を入れている。これ以上、災害でつらい思いをする人を出さないため、様々な気象データの分析に注力している。(池田寛樹)

母や祖母が被災

 那須さんは同気象台の「現業班」に所属。パソコンのモニターに映る気象観測データや雨雲レーダーなどを分析。予報官の補助役として、日々の予報や注意報・警報発表の原案を作成する。

 4年前の7月4日午前、鹿児島市の鹿児島大理学部4年だった那須さんは、母親から、錦町の実家周辺は崖崩れで道路が寸断され、集落ごと孤立したことを知らされた。隣接する人吉市も広範囲で浸水被害を受け、同市にある祖母の木造2階建ての家は1階部分が約2メートル浸水した。

 那須さんが毎日通学で利用したくま川鉄道は橋が流出し、毎年初詣で訪れた国宝・青井阿蘇神社は、境内に土砂が大量に流れ込んだ。市内は更地が目立ち、「一夜の雨で一変してしまうんだ」と衝撃を受けた。

事前把握の必要性

 熊本、大分、長崎、福岡、鹿児島の九州5県で81人の死者・行方不明者を出した九州豪雨は、短時間に大雨をもたらす「線状降水帯」が原因だった。那須さんは豪雨以降、ネットで気象庁の雨雲レーダーや、国土交通省などが設置する各地の河川カメラの映像を注視するようになった。

 大雨の度に観察すると、普段は静かな河川でも、雨で急に氾濫寸前まで水位が高まることがわかった。「豪雨災害はどこでも起こりうる。事前に雨の危険性を把握しないと対応できない」。気象庁の情報発信に魅力を感じ、鹿児島大学院を修了後、同庁に入庁した。

 入庁後、宮崎地方気象台に配属。同気象台の観測予報管理官、立神幸治さん(56)は「(那須さんは)大学で物理を修めており、気象に関する理解が早い。仕事に対しても非常に熱心に取り組んでいる」と評価する。

 同庁は九州豪雨をきっかけに、21年から線状降水帯発生を検知して即時発表する運用を開始。22年から発生を半日前に予測して警戒を呼びかける。

 同気象台も5月以降、線状降水帯発生を3回予測したが、実際の発生はない。線状降水帯は、3時間雨量が100ミリ以上の区域が500平方キロ以上など基準があり、局所的な大雨は該当しないからだ。ただ、大雨の危険性に変わりはなく、那須さんは自治体からの問い合わせに予想される雨量や警戒が必要な時間帯などを伝えている。

 大雨が予想される日は、昼夜を問わず、雨量計や気象レーダー、気象衛星などで雨の実況監視を行う。那須さんは「自治体や住民と危機感を共有できるように努力したい」と力を込めた。

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