広瀬めぐみ参院議員に秘書給与詐取疑い、自民離党届受理…地元・岩手「事実なら残念」

　自民党の広瀬めぐみ参院議員（５８）（岩手選挙区）が国から公設秘書の給与をだまし取っていた疑いがあるとして、東京地検特捜部は３０日、東京都内の広瀬氏の自宅や国会議員事務所などを詐欺容疑で捜索した。特捜部は押収資料の分析とともに広瀬氏に対する事情聴取も行い、給与の取り扱いなど資金処理の実態を調べる方針。広瀬氏は同日、離党届を提出し、受理された。

　関係者などによると、広瀬氏は、２０２２年１２月から昨年８月にかけて公設第２秘書として届けていた女性に勤務実態がないことを知りながら、国から支払われる秘書給与数百万円をだまし取った疑いがもたれている。この約９か月間に、国から女性には３００万円以上が支払われたとみられる。女性は、広瀬氏の公設第１秘書を務める男性の妻で、岩手県遠野市の不動産会社で働いていたという。

　特捜部は３０日午前から、参院議員会館にある広瀬氏の事務所のほか、文京区の自宅や盛岡市の地元事務所などを捜索。係官らは夕方頃、押収物を次々と運び出した。

　秘書給与を巡る疑惑は今年３月の週刊誌報道で浮上した。広瀬氏は自らのウェブサイトで、公設第２秘書に勤務実態がないと指摘した報道を「事実無根」と否定した上で、女性について、平日は遠野市で不動産業を営み、週末は盛岡市に滞在していたと説明。「平日はリモートワークで支援者のリスト作成・更新など、土日は盛岡事務所での事務作業や送迎をしてもらった」「目に留まりにくい活動が中心とはいえ、勤務実態があったことに間違いない」と主張していた。

　特捜部の捜索を受けたことについて、広瀬氏は議員会館で報道陣に「まだ事情がわからない。事情がわかったら説明する」と話すのみで、自宅に姿を現した際にも「後で説明します」と述べるにとどめた。

　広瀬氏は弁護士で、２２年参院選で岩手選挙区から立候補し、初当選した。

「本人がしっかり説明を」

　広瀬氏の自宅など関係先が東京地検特捜部の強制捜査を受けたことについて、地元の自民党関係者からは説明を求める声が上がった。

　岩手県連会長を務める藤原崇衆院議員は「非常に驚いており、このような事態になって遺憾だ。大変申し訳なく思う」と謝罪。３月に週刊誌報道で疑惑が報じられた際、県連で広瀬氏に事情聴取を行ったといい、「当時は疑惑を否定していた。まずは本人が事実関係をしっかりと説明することが大事だ」と述べた。

　広瀬氏はこれまで、自身のウェブサイトで疑惑を否定する文書を複数掲載してきた。広瀬氏を支援してきた県内の自民党関係者は「本人の言葉を信じていたが、疑惑が事実ならば残念。裏切られたという思いだ」と語気を強めた。

　自民党を巡っては、巨額の裏金が発覚した派閥の政治資金パーティーを巡る事件や、特捜部が捜査している堀井学衆院議員（５２）（離党）の公職選挙法違反事件に続き、再び「政治とカネ」の疑惑が浮上する形となった。

　岩手県内の自民党関係者は「他の事件もあり、自民党の信用は地に落ちている。広瀬氏の問題で支持離れに拍車がかからないか」と不安の声を漏らした。

公設秘書３人の給与は公費

　国会議員は、特別職の国家公務員である公設秘書を３人置くことが可能で、採用するかどうかは議員が判断し、３人の給与は公費で賄われる。

　公設秘書には、議員の政策立案や立法活動を補佐する政策秘書と、職務の遂行を補佐する公設第１秘書と公設第２秘書がいる。政策秘書になるには国が行う試験に合格するなど資格の取得が必要だが、公設第１、第２秘書はいずれも特段の資格は要さない。

　参院事務局によると、政策秘書の給与は月４３万～６４万円で、公設第１秘書と公設第２秘書にはそれぞれ月４１万～６３万円と月３２万～４７万円が支払われる。６月と１２月にはいずれも約２・５か月分前後の賞与も支給される。

　１９９０年代後半から２０００年代前半にかけては、公設秘書の給与を巡り、与野党の国会議員が有罪判決を受ける詐欺事件が相次いだ。仕事をしていない人物の名義を公設秘書として借りた形にして、議員事務所の口座に振り込まれた給与や賞与をだまし取るなどしていた。

　このため、０４年に国会議員秘書給与法が改正され、公設秘書の給与は本人に直接支給されるようになったほか、公設秘書への寄付の勧誘や要求が禁止された。