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安部公房が撮影、未発表含む92枚を写真集に…都市題材に「孤独」や「不安」浮かぶ

読売新聞 / 2024年7月31日 5時0分

 「砂の女」などの小説で知られ、今年生誕100年を迎えた作家、安部公房(1924~1993年)が撮影した未発表写真を収めた写真集が来月上旬、刊行される。都市の工場地帯などが題材となっており、写真を通して、現代社会に生きる人々の孤独や不安を表現できないか試みた様子がうかがえる。

 安部は幼い頃からカメラに親しみ、作家になった後も自宅には暗室を備え、カメラを携えて移動していた。写真への関心は深く、小説「箱男」や数々のエッセーなどでは、自らの写真を作中に折り挟んでいる。現在刊行されている新潮文庫の装丁にも、安部撮影の写真があしらわれている。

 今回の写真集は生誕100年を記念し、安部の全集や文庫の装丁を手がけたグラフィックデザイナーの近藤一弥さんが編集した。

 近藤さんによると、残された写真のネガはおよそ1万カット以上に及び、多くが未公開という。写真集刊行にあたってネガを精査し、既発表のものに加えて未発表の写真を含め、計92枚を採用して1冊にまとめた。

 全集未収録の写真の中で、海外で撮影したとみられる1枚は、工場地帯と羽ばたく鳥の姿が写されている。発展する資本主義社会における人々の寂しさのようなものを漂わせる。安部は自身のインタビューの中で、写真について「町を歩いていて、とにかくシャッターを押していると、それが自分の作品のための肥やしというか、種子というか、作品のディテールを埋める上に、ものすごく役に立つことがある」と語っていた。観察者としての安部の鋭い視線がにじむ。

 近藤さんは、安部が劇団「安部公房スタジオ」を設立した1970年代から撮影枚数が増えていると指摘する。撮影対象は、路上生活者や湾岸の埋め立て地など、成長する都市の片隅で見落とされがちなものが好んで選ばれているという。「作家の余技ではなく、見応えがある。アーティストとして社会を見つめ、新しい表現方法を模索していたのではないか」と話す。

 未発表写真を収めた一冊は「安部公房写真集」の題で、新潮社から刊行される。

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