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日銀総裁「経済に下振れが生じた場合、0・25では対応しづらい」

読売新聞 / 2024年7月31日 16時42分

記者会見する日銀の植田総裁(31日、日本銀行本店で)=桐山弘太撮影

 日本銀行は31日の金融政策決定会合で、政策金利を0・25%程度に引き上げることを決めた。31日午後、日銀本店で開かれた植田和男総裁の記者会見の主なやり取りは次の通り。

 「きょうの会合では、政策金利である短期金利の誘導目標を0~0・1%程度から0・25%程度へと変更した。なお、中村委員と野口委員は方針に反対した。国債買い入れの減額は、毎四半期に4000億円ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度とすることを決めた。

 わが国の景気の現状は、一部に弱めの動きもあるが緩やかに回復していると判断した。賃金面では春闘で幅広い業種、規模の企業で賃上げがあった。物価はサービス価格の上昇が続いている。以上のことから金融政策の変更が適当と判断した。

 国債の買い入れ額の減額については、前回会合で減額方針を決定し、市場参加者の意見も聞いてきた。来年6月の決定会合では減額の中間評価を行う。減額計画を維持する前提だが、必要とあれば適宜、計画に修正を加える。なお、必要な場合には減額計画を見直すこともあり得る」

 ――長期国債の買い入れ減額だが、7月の債券市場参加者との会合でどのような意見を聞いて判断したのか。政策金利は3月以来の引き上げとなったが、消費の弱さを指摘する声もあった。

 「債券市場参加者会合では国債買い入れの減額幅、ぺース、臨時オペの位置づけなどの意見をもらった。それを今回反映させている。国債市場の安定のため、中間評価の実施も決めた。市場参加者の意見を丁寧に聞き、しっかりとした減額計画を決めることができた。利上げについては、個人消費は物価上昇の影響も見られるが、底堅く推移している。賃上げの動きも確認されており、先行きこの動きが進めば個人消費を支えると判断している。物価動向では、企業が賃金上昇分を価格に反映させる動きが出ている。わが国の物価は、これまでの展望リポートに沿って推移している。物価の上振れには注意する必要があり、今回、政策金利を引き上げることが適当と判断した。今後も引き続き、政策金利の度合いを調整していく」

 ――今回利上げした理由だが、9月の会合まで待てば新たなデータが出て諸費の強さや賃上げの強さが確認できた。なぜ7月の会合で利上げしたのか。政府は定額減税の実施や電気・ガスの補助金を再開を決めた。秋には経済対策も予定している。政府・日銀は連携しているのか。

 「賃金は春闘の結果が着実に反映されつつあると判断した。この動きは数か月続いていくと判断した。消費はすごく強いわけではないが、底堅いと判断している。その中での利上げだが、先ほど申し上げたが、実質金利で見れば非常に低い水準での調整で、景気にマイナスの影響を与えるものではない。政府とは基本的な見方で連絡を取っており、認識を共有している」

 ――金利の先行き見通しについて。過去30年、中立金利が0・5%を超えたことがない。現状と比べて材料は必要か。もう一つ。将来的なバランスシートについて。残高のゴールがみえない。将来どういった点に着目するのか。

 「経済物価の調整が見通しに沿って動けば。今回の見通しはほとんど変更していません。引き続き金利を上げていくことを考えています。0・5%を意識するか。特に意識していません。

 バランスシートの大きさ、国債保有残高、2年後に試算では今回の計画で7~8%程度減少すると考えています。おそらく長期的に望ましいところよりも高い。どのへんかという点は、他の中銀も量的緩和の後は模索状態。参考にしつつ、だんだんと見極めていきたいと考えています」

 ――今後の金融政策運営について。年内にもう一段踏み切るか。影響を一定期間みたいと考えるか。利上げが経済に与える影響。全体ではプラスとみている。プラスとマイナスもあると思う。整理して教えて欲しい。

 「年内に、もう一段の調整があるかどうか。ここから先のデータ次第になる。見通し通り、見通しに比べて上ぶれる場合は、短期金利の調整があり得る。データや情報の確認。これまでの影響も確認しつつとは当然なる。

 今回の利上げ影響について。単体でとれば、一部の貸出金利が上昇する。それだけをとれば、マイナスの影響がある。賃金物価が上昇している中での動きなので、必ずしも経済が減速するとはみていない。長期的な観点で申し上げれば、非常に低い水準にある。少しずつ調整したほうがあわてて調整することに追い込まれた時のリスクを減らすという意味でプラスになるという考え方もあるとみています」

 ――今後も利上げを段階的に進めるのか。利上げスタンスについて。長期国債の買い入れについて。1年前は市場に委ねていくと言っていた。今回は減額する。中銀が長期国債購入を否定しているようにもみえる。どう位置づけているのか。

 「中立金利の不確実性についての考え方は変わっていません。どのあたりでストップするかという課題は残っています。これまで申し上げてきましたが、2度目の利上げ。影響をみつつ、歩きながら考える。現状では、不確実な範囲よりは、かなり下にあるという点で、調整になると申し上げられると思います。

 長期国債の買い入れをどう評価するか。申し上げるまでもなく、大規模緩和では政策に使っていました。(現在は)短期の金利を調整することを主たる手段とするスタンスにシフトしたところです」

 ――追加利上げと国債減額。ツールは短期金利。長期金利も上昇する影響についてどう考えるか。物価見通しについて。利上げ決定でどの程度考慮されたのか。

 「今回短期の引き上げと買いオペ減額の両方を決めたわけですが、買いオペ減額は、大きな枠組みは6月にアナウンスしていましたので、かなりの程度、織り込まれていたとは思っています。そのうえで、今回、話したような姿での減額が長期金利にどれだけの影響があるのか。時々申し上げていますが、国債の残高が大きいことから来る、長期金利を下げる、残高効果が減ることになりますが、2年先でも7~8%。金利上昇圧力はたいしたものではないと考えています。

 円安と見通し変更の関係について。年初来、昨年末以来の円安。消費者物価の見通しが前回から動いていないので、見通しに大きな影響を与えたわけではありません。見通しに対して、上ぶれるリスクとしてはかなり大きなものだと評価したうえで、政策対応をしたということであります」

 ――これまでは賃上げの広がり、サービス価格への転嫁を条件に政策判断をしていた。利上げをする上で今後注目するポイントは変わるのか。今後の判断のポイントについて。円安の場合は輸入物価上昇につながる。円高の場合も同じことがいえるのか。円安から円高に振れている。為替は動くものだ。先行き経済影響を判断する時に、円高についてどう考えるか。

 「どういう情報をみていくか、これまでとおおまかに同じ。賃金、物価、サービス価格の動向、インフレ期待の動向、総需要、GDPギャップ、先程来申し上げている、金利上昇が経済にどういった影響を与えるか、幅広い観点でみていく。

 為替が物価に与える影響の程度は、これまでのインフレ、基調的な物価で企業行動が大きく変わっている可能性がある。円高になっても同じパラメーターかという質問では、なんとも申し上げられません。対照的なのか、パススルーの程度が上昇しているようにみえる。インフレ基調が上がってきたからなのかもしれない。円高になって逆方向に行く時に同じなのか、戻ってしまうのか、面白い問題かと思いますが、いまは答えがあるわけではありません」

 ――利上げに踏み切った理由。リスク、しないリスクについて話してもらった。詳しく聞きたい。低い金利を調整したほうがあわてて上げないで済むという判断が影響したと思うが、景気の腰折れリスクをどう考えたか。東京都区部の消費者物価は生鮮エネルギーを除く総合は市場予想を下回った。サービス価格も鈍化した。利上げをして経済に問題ないということなのか。

 総裁の本、ゼロ金利との闘いを読むと、量の削減に着手してからすみやかに正しい金利に持って行くべきだと。なるべく早めにプラスの金利に持って行く。今回は同時だ。急ぐ必要があったのか。米国の利下げが始まる前なのか。

 「金利を引き上げておいたほうがいいという際の理由。おっしゃったように、中長期的に、持続的安定的に2%を実現するためにも早めに対応したほうがいい。景気腰折れリスクを高めるのではないかという指摘ですが、25ベーシスに上がっても、低い水準。実質金利で考えれば深いマイナスだ。強いブレーキが景気にかかるとは考えていません。東京の消費者物価弱めにも見えますが、一部を除けば弱くなく、サービス価格も伸びている。

 二十数年前に書いた本ですが、量の削減と金利引き上げについて、思い出せないので、またの機会にお願いしたいと思います。思い出したらお伝えします」

 ――今回の決定の前に、金融政策を巡る政治の発言があった。意識されたか。今後の利上げは4か月。次の判断も物価動向の点検として今回と同等程度の4か月くらいはみたいと考えるか。

 「いろいろな方々からコメントを頂きましたが、個別の発言にコメントさせていただくのはなしとさせていただきたいと思います。物価上昇2%の実現のために、適切な金融政策を決めた。政府とは適切に情報交換をしており、経済、物価情勢の認識は共有しております。

 次のタイミングは何か月後か。4か月か長いのか。前もって何か月と決めてパスを思い描いているのではなくて、申し上げたような指標を確認しつつ、見通しが判断できれば、次の判断をする。どういうタイミングになるかは事前に申し上げにくいと思います」

 ――円安で物価を想定以上に押し上げるリスクが高まったことも利上げの背景にあるのか。金利のある世界はなじみがなく、若い世代には不安もある。景気を冷やすことはないのか。どんな生活になると考えていますか。

 「円安の物価への影響は、中心的な見通しを動かすということでは、見通しに織り込んでいません。動くかもしれないというリスクを認識して政策判断の理由にしたということです。

 住宅ローン金利。確かに、今回利上げをすると、短期プライムレートが動いて、変動金利型のローンにはねることも考えられます。一方で賃金上昇が続く見通しで利上げの判断になった。変動金利型のローンは5年ルールがある。未払い額は据え置かれるものが多いと認識しています。5年間賃金があがって、利払い額があがるので、負担は軽減されると意識しています」

 ――今後の利上げのタイミングについて。少し早めに金利の調整をした方がいいという。国内外の情勢リスクの高まりというのは利上げ判断でどの程度影響したのか。

 「選挙と政治的な動きの影響は、常々申し上げていますが、それによって政策が変わる等の経済に大きな影響があれば別ですが、そうでなければ、かかわりなく、適宜適切に金融政策を決定していくということです」

 ――今後の利上げはデータ次第。利上げがあることは排除していないのか。

 「データが見通し通りに、蓄積されれば、次のステップに行くことになるかと思います」

 ――経済物価の変動、見通しの変更は、政策金利で決める。海外経済のショック、景気循環で日本経済に下振れが生じた場合、0・25では対応しづらい。短期金利が中心なのか、長期金利を下げることで景気を支えるのか。

 「下振れ方向、経済物価見通しが下振れにあるときの判断ですが、どういう水準にあるかわかりませんが、まずは短期金利を下げるのが適当かどうかを考え、足りない時は、非伝統的な手段を使うことを排除するわけではありません」

 ――今回の利上げの結果、家計の影響。住宅ローン金利があがる。どういうことなのか。

 「借り手としての家計は金利が上がるとすれば、固定か変動か、いつ借り換えるかにも影響しますが、マイナスもあるし、預金金利が上がることからプラスも受ける。基本的に、ネットでは貸し手である。両方あるかと思います。賃金があがる中で起きている。家計への全体的な影響を考えることになるかと思います」

 ――きょうの追加利上げの背景を聞いても、価格転嫁の広がり、賃上げの広がりができている、順調にできているととらえている。デフレ時代が過去のものに感じられる。総裁としていまの日本経済の変化、デフレから脱却した、かなり脱却が近いのか、認識を。

 「デフレ経済という言葉に特別な思いが込められることがあるので、基調的な物価上昇率が0近辺からプラスの領域に入った、2%に向けて上昇する、近付いてきている。ただもう少し距離があるということだと思います」

 ――中小企業への影響について。物価見通しが続けば追加利上げもある。防衛的な賃上げを強いられている企業もある。ゼロゼロ融資の返済もあって苦しいところもある。追加利上げに耐えられるのか。耐えられないところはどうするのか。

 「中小企業にはばらつきがあり、大企業よりも元気なところもある。賃金引き上げも平均的では去年よりもしっかりしているが、ついてこられないところもある。ばらつきは注意したい。ついてこれない企業の労働者が生産性の高い企業に移れる仕組みが続いていくか、モニターしていきたいと思います」

 ――今回の利上げ判断。物価経済の見通しがオントラックにある。為替も影響した。歴史的な円安が利上げの大きな判断材料だったのか。

 「今回の利上げで申し上げれば、メインの理由としては、経済物価データがオントラックだったということ。円安が物価の上振れリスクを発生させていて、利上げにいたったということです。(為替が)最大の理由ではないです」

 ――この1か月に閣僚や財界トップから利上げを催促する発言が出た。物価の番人として恥ずべきことではないか。円安の進行は日銀に責任があるのではないか。

 「政府要人の発言については、発言は承知していますが、個別のコメントをすることは控えたいと思います。2%目標を達成するという観点で政策を決めています。消費者物価総合、除く生鮮が2%を超えている期間も2年を超えている。高いインフレが人々に負担をしいているのは申し訳ないと思っています。持続的に2%に達成するには、基調的に2%にならないといけない。そこからみればまだ低いので緩和を維持しています。難しいところですが、ご理解いただければと思います」

 ――情報発信について。決定会合前の報道が常態化している。海外からの注目度も高い中で、発信のあり方の改善について。ブラックアウトの前にボードメンバーの発言機会を増やすなど、改善の可能性について。

 「現状ルールのなかで情報管理をしているという認識です。報道については観測報道だと理解しており、よりよいあり方がないか、検討していきたいと思います」

 ――政策金利の推移について。以前、展望リポートの見通し期間の後半には中立金利に近付いていると話していた。インフレリスク、物価上昇リスク、総裁の政策金利のパスに変更がないか。

 「中立金利の行き着く先が搾り切れてはいません。今ここら辺にあるというのは走りながら考えるということは言えるかと思います」

 ――中小企業の関連で、賃上げについてこれない企業が生産性の高いところに移れるように。労働者が移った企業はどうなるのか。利上げについてこれない企業は出てくるはずだ。影響をどう考えるか。

 「難しい問題ですが、利上げ、賃金上昇についていけない中小企業がデフレ圧力を発生させ、生産性の高いところに移れれば経済全体の向上につながる。両方の可能性があることを認識しつつ、点検していきたいと思います」

 ――質的緩和については残っている。保有ETF(上場投資信託)について。正常化についての考えを。

 「もう少し時間を頂きたいと考えております」

 ――追加利上げを行ってからのさらなる利上げは長いこと経験していない。正念場だという話もある。難しさをどう考えるか。

 「今のところ、金利水準、名目でも実質でも低い中での挑戦だと考えております」

 ――今回の利上げ判断について。なぜいま判断したのか。わかりやすく教えて欲しい。いま判断しなければ、どんなリスクにさらされるのか。物価が2%よりも高いところに上振れるのか。

 「4月以降のデータがまとまって評価できることに達したということ。もう一つは、焦って上げなくてもいいのではないか。少しずつでも早めに調整したほうが楽になる。別のことでいえば、2%を超えるインフレが長く続いている。利上げの理由として申し上げた上振れリスクもある。それ以上になってしまうリスクもあると考えると、この辺でと考えたということです」

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