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「凡人のヒーロー」永瀬貴規、「金」に導いた「がむしゃらに柔道を楽しむ」という原点

読売新聞 / 2024年7月31日 18時40分

 パリオリンピックは30日午後(日本時間31日未明)、柔道男子81キロ級決勝が行われ、前回東京大会で金メダルを獲得した永瀬貴規(旭化成)は、世界ランキング2位の24歳、タト・グリガラシビリ(ジョージア)に一本勝ちし、連覇を達成した。男子81キロ級の連覇は、オリンピック史上初の快挙。

 重圧に打ち勝ち、偉業を成し遂げた。柔道男子81キロ級で連覇を果たした永瀬 貴規 たかのり選手(30)。飛び抜けた才能はないが、猛稽古で力をつけ、恩師から「凡人のヒーロー」と評される。東京五輪後の不振を、柔道を楽しむという原点に立ち戻って脱した。(蛭川裕太)

 リオデジャネイロ、東京に続く五輪を危なげなく勝ち上がった。決勝も世界選手権3連覇中のジョージア選手に一本勝ち。深い礼を繰り返して畳を下り、「私らしい柔道ができた」と話した。

 得意の組み手で優位に立ち、相手の隙を逃さずに勝負を決める。その戦い方は長崎日大高校時代、柔道部監督の松本太一さん(44)によって磨かれた。

 「持っている才能なら、上回る子はたくさん見てきた。永瀬は素直さと勤勉さで強くなった。努力次第で夢をつかめると証明した」と松本さんは語る。

 高校時代、大学に出稽古に行って乱取りをさせると、学生が休んでいる間もひたすら続けた。体調が悪くても稽古は休まない。社会人になった今も、周囲が止めるほど練習している。

 「周りの人からは異常と言われるけど、その積み重ねが自分を作っていることを本人もわかっている」。そんな教え子を松本さんは敬意を込めて、「凡人のヒーロー」と評する。

 もう一つ特徴があった。相手から投げられない「受け」の強さ。それは攻めの遅さにもつながる。その悪癖が東京五輪後に顔をのぞかせた。相手に研究されたこともあって手が出ず、後手に回って指導を受ける。

 「何かがかみ合わず、自分らしい動きができなくなっていた」。パリの代表に内定してから初めてとなった昨年12月の国際大会も、3回戦で敗れた。

 それから2週間後、壮行会で長崎の母校を訪れた。松本さんが「永瀬貴規追い込みデー」と名付けた猛練習で歓迎してくれた。高校生と組み合い、トレーニングに汗を流した。

 恩師に言われた。「勝たなくちゃいけないという重圧に負けて、つまらない柔道になっている。小学生に戻ったつもりで、楽しく思い切ってやれよ」

 原点を思い返した。「がむしゃらに、好きな柔道を楽しもう」。粘り強く自分のペースに持ち込む形を取り戻した。今年3月の国際大会では、東京五輪以来、3年ぶりに優勝した。

 「もやもやした気持ちがあったが、自分自身に強い気持ちが芽生えてきた」と自信を深めた。「重圧を抱えられるのも幸せ」。そう思えるようにもなった。

 リオの「銅」、東京の「金」に続く金メダル。結果を出し続けられる要因を問われ、こう答えた。「つらい時、うまくいかない時もやるしかない。継続すること、私の場合はこれに尽きる」。ぶれない軸が偉業を可能にした。

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