1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

ハマス首脳殺害 報復と混乱の連鎖を懸念する

読売新聞 / 2024年8月1日 5時0分

 パレスチナ自治区ガザを実効支配していたイスラム主義組織ハマスの最高幹部が殺害された。更なる報復と、中東情勢の混乱が一段と拡大しかねないことを懸念する。

 殺害されたのは、ハマス政治部門のトップを務めるイスマイル・ハニヤ氏で、テヘランに滞在中だった。ハマスはイスラエルによる攻撃だと主張している。

 イスラエルがハニヤ氏殺害のためにイラン国内で攻撃を実施したとすれば、明らかな国家主権の侵害であり、重大な国際法違反にあたると言わざるを得ない。

 ハニヤ氏は攻撃の前日、イランのペゼシュキアン大統領の宣誓式に出席していた。重要行事に合わせた殺害で、イランの体面が傷つけられたのは間違いない。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「 復讐 ふくしゅうはイランの義務である」と述べ、報復を宣言した。

 だが、地域大国であるイランがイスラエル本土や在外公館などに対する大規模な攻撃に踏み切れば、戦闘がエスカレートし、制御不能に陥る可能性がある。慎重な対応を求めたい。

 今回の事件で、ガザでの停戦が遠のいたのは明らかだ。

 イスラエルは昨年10月のガザ攻撃開始以来、ハマス幹部を殺害し、組織全体を壊滅するという目標を掲げてきた。だが、ハマスは集団指導体制を取っており、幹部はカタールやレバノンなどを拠点に活動を続けている。

 ハマス側は今後、ガザで抵抗を強め、イスラエル国内への攻撃を激化させるとみられ、戦線が拡大する恐れも強い。

 米国とエジプト、カタールはハマスとイスラエルの停戦交渉を仲介している。それぞれの国が持つルートを通じて、当事者に自制を強く働きかけてもらいたい。

 イスラエルによる武力行使は、中東全体に混乱を広げている。

 ハニヤ氏殺害の直前には、イスラエル軍がレバノンの首都ベイルートを空爆し、イスラム教シーア派組織ヒズボラの最高レベルの軍事司令官を殺害した。

 イスラエルは、占領下に置くゴラン高原がロケット弾で攻撃され、子供12人が死亡したことへの報復だと主張している。しかし、他国の首都への攻撃が、深刻な事態を引き起こす可能性を十分に考慮したのか、甚だ疑問である。

 パリでは夏季五輪が開幕し、パレスチナ、イスラエル、イランの選手団も参加している。五輪休戦の願いに反し、殺害の応酬が止まらないのは極めて残念だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください