日銀の金融政策 本格的な「金利のある世界」に
読売新聞 / 2024年8月1日 5時0分
日本銀行が、本格的な「金利のある世界」へと金融政策をさらに一歩、進めた。日銀は、景気や物価の動向を丹念に点検し、政策を運営していってもらいたい。
日銀は、現在0~0・1%程度の政策金利を、8月から0・25%程度に引き上げることを決めた。3月にマイナス金利政策を解除して以降、物価の基調が上昇し、景気も底堅いと判断した。
国債は、これまで月額6兆円程度を目安に買い入れてきたが、段階的に減らし、2026年1~3月に3兆円程度へ半減させる。
日銀の植田和男総裁は記者会見で、利上げについて「金融緩和の度合いを調節することが適切だ。強いブレーキが景気にかかるとは考えていない」と説明した。
今春闘では、33年ぶりの高い賃上げ水準が実現したほか、円安で物価が予想より上振れる可能性がある。物価高の下での超低金利政策が、金融緩和の効果を高め、必要以上に景気を刺激するリスクがあることを考慮したのだろう。
円安で輸入品の価格が値上がりして物価高が長引き、家計は苦しい。利上げは、過度な円安を是正する効果もあるのではないか。
日銀の金融緩和策は、デフレの長期化に伴って常態化した。
円安の影響も相まって、23年の名目の国内総生産(GDP)は、ドルに換算するとドイツに抜かれて4位に転落した。
日本経済は今、人件費などを抑えて割安な製品を販売する「コストカット型経済」から、賃金と投資が増える「成長型経済」へと、転換していく局面にある。
活力ある日本経済の実現に向け、日銀は、金融政策の正常化を進めていくことが大切だ。
今後の懸念材料は、個人消費の弱さである。1~3月期の実質GDPは前期比年率で2・9%減となり、個人消費は、4四半期連続で前期を下回っている。
物価変動を反映した実質賃金は2年以上もマイナスで、消費者には「値上げ疲れ」も見える。
利上げは、住宅ローン金利を上昇させ、消費を冷やす恐れがあるほか、中小企業の資金繰りが苦しくなる懸念もある。日銀は、景気にも丁寧に目配りして、追加利上げの時期を判断してほしい。
消費者物価指数の上昇率は2年以上も目標の2%を上回っているが、日銀は一時的要因によるもので、物価安定目標を達成できていないとしている。国民の実感とずれていることが課題だ。日銀は説明を尽くしていく必要がある。
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