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バス運転手にナイフ突きつけた少年、説得した元警官「かわいい顔じゃないか」…主導権握った「少年との会話」

読売新聞 / 2024年8月1日 13時0分

愛知県警時代の経験を踏まえ、講演活動を続けている小池さん(蒲郡市で)

 16年前の7月、高速バスを中学2年の少年(当時14歳)が乗っ取る東名高速道路バスジャック事件が起きた。愛知県警機動捜査隊の中隊長を務めていた小池勝孝さん(62)は、少年の説得にあたった経験などから、学校などで講演活動を続けている。小池さんが願うのは「子どもが被害者にも加害者にもならない社会」だ。(成田沙季)

 バスジャック発生――。事件当日、連絡を受けた小池さんは現場の東名高速上り線に駆けつけた。高速では出動した警察車両がバスを見つけ、岡崎市の 美合 みあいパーキングエリアへ誘導した。

 小池さんはバスの窓越しに少年との接触を試みた。車内で少年は運転手にナイフを突きつけ、「東京へ向かえ」などと脅していた。少年がふとした拍子にサングラスを外すと、幼い顔が見えた。「何だ、かわいい顔じゃないか。中学生か」。実像が分かってくると、徐々に会話がかみ合った。

 少年は「SAT(特殊急襲部隊)が来るのか」と聞いた。その目を見据え、「警察が突入したら、お前が大けがをするかもしれない。けがはさせたくない」と答えると、少年は気弱そうな表情を浮かべたという。主導権を握った瞬間だった。求めに応じてナイフを下ろした少年を銃刀法違反、監禁両容疑で現行犯逮捕した。

 けが人はおらず、事態収拾に 安堵 あんどする一方、「逮捕された経験が、少年の内面や人生に与える影響を想像すると、やるせない気持ちになった」と振り返る。少年は女友達との交際などについて両親からしかられた腹いせに犯行を計画したとされた。事件後、複雑な気持ちは膨らんだ。

 その後、県警薬物銃器対策課次長や蒲郡署長などを務める中でも度々、覚醒剤の使用や窃盗などに関わる少年、少女を目にした。「犯罪や非行に手を染める子どもを減らしたい」。在職中に続き、2021年に定年退職後も、県内の中学校や大学などで積極的に講演活動に臨んだ。

 講演では闇バイトや薬物の運び屋など、自身が捜査に関わった経験を踏まえ、学生らが巻き込まれることが多い具体的な犯罪を紹介している。こうした犯罪に加担せず、巻き込まれないようにするために勧めているのが読書だ。「想像力が磨かれ、自分の行動が他者に及ぼす影響を考えられるようになる」と強調する。

 「若い世代はスマホに慣れ親しみ、ネットから多くの情報を得ている。だからこそ直接訴えかけたいと思う」。これからも、まっすぐに思いを伝え続ける考えだ。

◆東名高速道路バスジャック事件=2008年7月16日、東名高速上り線を走行中の名古屋発東京行き高速バス(2階建て)で、山口県の中学2年の少年(当時14歳)が運転手の首にナイフを突きつけて脅し、乗客10人を1階の座席に座らせるなどして監禁した。バスは岡崎市の美合パーキングエリアに停車、県警の説得を受けた少年は抵抗せず、乗客を解放した。けが人はいなかった。県警は銃刀法違反、監禁両容疑で少年を現行犯逮捕した。その後、山口家裁は銃刀法違反と監禁の非行事実で初等少年院送致を決定、少年側は抗告したが、広島高裁が棄却した。

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