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前半からペース上げたかった男子200平泳ぎ、衝撃的だったバタフライ本多灯の予選敗退[柴田亜衣さんの目]

読売新聞 / 2024年8月1日 12時44分

 パリオリンピックの競泳は31日(日本時間8月1日)、男子200メートル平泳ぎの決勝が行われ、花車優(イトマン東進)が2分8秒79で5位、渡辺一平(トヨタ自動車)が2分8秒83で6位となり、日本男子のお家芸の平泳ぎで3大会ぶりのメダル獲得はならなかった。また、30日の男子200メートルバタフライでは東京大会銀メダルの本多灯(イトマン東進)が予選落ちする波乱もあった。2004年アテネ五輪女子800メートル自由形金メダリストの柴田亜衣さんが解説する。(デジタル編集部)

 200メートル平泳ぎの2人は、自己ベストを出せればメダルがとれていただけに悔しい結果となった。

 周りに惑わされずに自分のレースをと言う気持ちはあったと思うが、前半のタイムが2人とも1分2秒台と遅かった。渡辺選手は、3月の選考会では100メートルも良くてスピードがあり、200メートルでも1分00秒台で前半を入っていた。今回も予選から前半を早く入って、準決勝、決勝と上げていくはずが、逆に決勝に向かって徐々に落ちてしまった。

 花車選手は、思い通りのレース展開だったと思うが、タイムが伸びなかった。前半が選考会に比べて1秒近く遅かったので、いくら後半に力があるとはいっても、前半からベストタイムを刻まないと、世界とは勝負できないと感じた。

 優勝したレオン・マルシャン選手(フランス)は別格の強さだ。バタフライは後半追い上げて、平泳ぎは前半からいくという自分のレーススタイルを貫いている。一日何レースを泳いで疲れていても、守りに入らず、持ち味をしっかり出している印象だ。

 日本の男子平泳ぎは2016年リオデジャネイロ大会から3大会続けてメダルが取れなかった。選考会のタイムで泳いでいればとは思っても、渡辺選手は2大会ぶりのオリンピック出場で、いろいろな思いがあってうまく乗れなかったのか。五輪にピークをもってくるのが難しい、五輪になると力が発揮できない、など難しい面もある。強化の部分では、持ちタイムを見るとそこまで悪い流れではないのだが。

 選手に実力がないわけではない。「お家芸」「メダルの歴史」はいったん忘れることも必要だ。シンプルに、ベストタイムを出すためにはどうしたらよいかというところに立ち戻ることで難しさをはねのけられることもある。

「エース本多」には大きなプレッシャーがあった?

 男子200メートルバタフライで、本多選手の予選敗退は今大会ここまで一番の衝撃だった。選考会からパリまでの練習がどうだったのか。自分が求めているタイムが出ない練習になっていたら不安や緊張に陥りやすいし、ベストを狙えるぐらいの良い練習ができていたら、本人がレース直後に語っていた「ここまで体がすくむとは思わなかった」という状況にはならなかったのかもしれない。練習に対しての不安があったのか、ここまでメダルを取り続けてきただけにプレッシャーが想像以上に大きくのしかかっていたのかもしれない。

 今回の日本競泳陣では本人の中でもチームの中でも、一番のエースは本多選手だったはず。そうした絶対的な評価の中で調子と気持ちを自分の中でうまくコントロールできなかったのだろうか。

 私自身、04年アテネ大会で金メダルを取った後も主要レースでメダルを取り続けていたので、4年後の北京大会でも取らなければと、すごく重く感じていた。ただ私たちの時には北島康介選手をはじめ、注目される選手がたくさんいたので、「プレッシャーを上乗せされてるのは北島君」というイメージがあり、他の選手には「自分だけじゃない」という心の余裕もあった。今大会の本多選手を見て、心の部分とコンディションをうまく掛け合わせられなかったのか、と五輪の難しさを感じている。

しばた あい 1982年福岡県生まれ。3歳で水泳を始め、鹿屋体育大学2年で日本代表入り。2004年アテネ五輪女子800メートル自由形で日本人の女子自由形選手では初の金メダルを獲得。08年北京五輪出場後に現役を引退。女子400メートル自由形 (4分05秒19)と女子1500メートル自由形(15分58秒55)の日本記録保持者。

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