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見た記憶がない「相手を背負うプレーでオフサイド」…日本の「11」の日ではなかった[編集委員の目]

読売新聞 / 2024年8月3日 8時32分

 パリオリンピックのサッカー男子は2日、準々決勝が行われ、D組1位通過の日本がC組2位通過のスペインに0―3で敗れた。

完璧なポストプレーが…

 サッカー界には、「今日は彼の日ではなかった」という言い回しがある。やることなすこと、なぜかうまくいかない。この日はFW細谷真大がそうだった。

 1点リードされて迎えた40分、MF藤田譲瑠チマから差し込まれた縦パスをゴール前中央のペナルティーエリア内で受けると、後ろから来た相手DFの力を利用するようにしてボールを少しずらし、反転しながら右足でシュート。DFの股間を抜いたボールがゴール左下に突き刺さった。

 スペインの守備陣が全員うつむいてしまう、完璧なポストプレーによるゴール。しかし、主審はなかなか試合を再開しない。VAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)が介入し、映像が確認された結果、ゴールは取り消された。パスが出た瞬間、細谷の右足かかとが相手DFよりわずかにゴールに近い位置にあり、オフサイドという判定だった。

 ずいぶんサッカーを見てきたが、相手を背負ってのプレーでオフサイドが取られたのは記憶がない。日本にとってはあまりに残酷なゴール取り消しだった。

ポストにも嫌われる

 惜しい場面は続く。前半終了間際、FKを右サイドのMF山田楓喜がゴール前へ。ファーサイドに走り込んだ細谷へ合わせるデザインされたプレーだったが、フリーで放ったヘッドは左ポストに嫌われた。細谷は2点差を追う81分にも相手ゴール前でDFからボールを奪うとすかさずシュート。しかし、今度は相手GKに左手一本で防がれた。

 どうしても点が取れなかった日本の背番号11に対し、絶好調だったのがスペインの背番号11、MFフェルミン・ロペスだ。11分、中盤で味方が奪ったボールを受けると、ペナルティーエリア外から思い切りの良い左足シュート。ここまで無失点のGK小久保玲央ブライアンの左手をはじいて決まる先制ゴールとなった。

 73分には左CKをペナルティーエリア外で待ち受け、今度は右足で弾丸シュート。2点目を奪った。名門バルセロナでプレーし、先の欧州選手権で4度目の優勝に輝いたフル代表の一員でもある。左右両足で強烈なキックが蹴れ、要所で相手をかわす高い技術も持つ。この日は彼の日だった。

勝敗分けたのは運だけではない

 結果的に0―3の完敗に終わった日本だが、細谷の幻のゴールが認められていれば、試合はどうなっていたか分からない。ただ、この敗戦を不運だけで片付けるわけにもいかない。スペインは工夫されたCKから2点を奪ったが、日本は準備された様々なセットプレーを繰り出したものの、結局ゴールは奪えなかった。

 また、スペインは今回、オーバーエージの選手も起用しているが、欧州選手権で主力だった17歳のヤマルや22歳のウィリアムズのような選手も、本来なら出場可能なことも忘れてはいけない。

 日本は五輪では2大会連続でスペインに煮え湯を飲まされた。ただ、これで解散する大岩ジャパンの面々にはさらに成長して、一昨年のワールドカップのように、フル代表でリベンジするチャンスが残されている。(編集委員 川島健司)

かわしま・けんじ 1963年、東京都生まれ。87年入社。宇都宮支局、地方部を経て91年に運動部。97~2001年にはロンドンを拠点に主に欧州のスポーツを取材。運動部デスク、部長を経て、14年から編集委員。17~21年は、東京オリンピック・パラリンピック準備室長を兼務した。サッカーのワールドカップは2022年カタール大会など男女合わせて計7大会を現地取材。

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