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EUの結束 議長国の独断は露中を利する

読売新聞 / 2024年8月4日 5時0分

 ウクライナ侵略を続けるロシアへの対応をめぐって、欧州連合(EU)の結束に綻びが生じている。加盟27か国は、ロシアの国際法違反を許さない厳しい姿勢を貫くべきだ。

 EU内でロシアへの融和的な立場が突出しているのは、ハンガリーのオルバン首相である。

 7月にロシアを訪れ、プーチン大統領と会談した。ハンガリーが7月から年末までEU理事会の議長国であることに触れ、ロシアと対話を継続する方針を伝えた。

 露軍の即時撤退やウクライナの領土一体性の尊重というEUの要求は明確に伝えなかった。これではロシアの立場を支持したとのそしりを免れない。

 議長国は、閣僚理事会などの進行が主な役割で、EUを対外的に代表するわけではない。オルバン氏が議長国の立場で、EUやウクライナと事前協議もなく訪露し、EUと異なる政策を伝えたのは、明らかな独断専行である。

 EUが8月の外相・国防相理事会の開催地を、ハンガリーのブダペストから本部があるブリュッセルに変更する懲罰的な措置を取ったのは、やむを得ないだろう。

 オルバン氏はまた、中国を訪問し、習近平国家主席とも会談した。経済中心に、EUと中国の関係を発展させる方針で一致した。

 米欧は、中国がロシアに軍事転用可能な部品などを輸出し、「戦争の決定的な支援者」となっているとして批判を強めている。オルバン氏の言動は、こうした立場と矛盾している。

 EUがちぐはぐな対応を続ければ、国際法を無視した露中の行動に歯止めをかけることは、ますます難しくなるのではないか。

 オルバン氏は、個人的に親密な米国のトランプ前大統領に倣って「欧州を再び偉大に」とのスローガンを掲げる。トランプ氏と同様に「自国第一」の立場から、EUのウクライナ支援に反対する。

 ウクライナ戦争の長期化で、他の加盟国にも「支援疲れ」が広がる。スロバキアやオランダでは、国内の物価高への対応を優先すべきだと訴える政党が選挙で勝利し、政権に就いている。

 6月の欧州議会選で、EU統合の推進役であるフランスやドイツでも、排外的な右派政党が政権与党より多くの支持を集めたことも重く受け止める必要がある。

 EUの分断を食い止めるには、自由と民主主義といった価値観を共有するだけでなく、インフレや移民政策への取り組みにも力を入れることが急務である。

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