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8強止まりのなでしこ、守備はピカイチ・攻撃いまいち…延長で元ストライカーのDF投入も不発[編集委員の目]

読売新聞 / 2024年8月4日 8時33分

 パリオリンピックのサッカー女子は3日、準々決勝が行われ、日本(なでしこジャパン)はアメリカに延長の末に0-1で敗れ、銀メダルを獲得した2012年ロンドン大会以来の4強入りはならなかった。

「5バック」でスペース与えず

 五輪での優勝4回、ワールドカップ(W杯)の優勝も4回という、女子サッカー界で圧倒的な実績を誇る米国を、日本は最後まで苦しめた。とにかく守備に統一感があった。

 1次リーグの3試合で計9ゴールと、強烈な得点力を持つ米国に対し、日本は相手ボールになると3バックの古賀塔子、熊谷紗希、南萌華だけでなく、守屋都弥、北川ひかるの両ウィングバックまで最終ラインに入り、5バックのような形で米国に攻めるスペースを与えない策を採った。

 ワントップに入った田中美南は、相手の守備陣にプレスをかけつつ、中盤の底で配球役を務めるアルバートへのパスコースをうまく消した。米国は長い時間ボールを支配するが、スペースがないため、パスはペナルティーエリアの外側を回るばかり。ボールを受けてから次の出しどころを考え、味方の足元へつなぐことの繰り返しで、攻撃のスピードがいっこうに上がらない。

怖かったのはロドマンぐらいだったが…

 じれた米国のFWが中盤まで下がってボールを受けに来ると、3人のセンターバックのうち誰かが、勇気を持って高い位置まで厳しく体を寄せてつぶしに行った。相手の攻撃で怖かったのは、FWロドマンが、NBAのスター選手だった父のデニスさん譲りのスピードを生かして突破を図る場面ぐらい。そして、その日本の不安は延長戦で現実のものとなった。

 延長前半の終了間際、ロングパスを右サイドで受けたロドマンがドリブルで一人をかわして中へ切り込み左足でシュート。これがゴール左隅に突き刺さった。GK山下杏也加の懸命のジャンプも届かない素晴らしいコースへの一発で、これはロドマンを褒めるしかない。1点を追う日本は終盤、元々はストライカーだったDF高橋はなを投入、前線に上げて得点を狙ったが、ゴールは遠かった。

長谷川唯交代で効果的なパスも出ず

 残念だったのは日本の攻撃だ。ボールを奪って自陣からさあ攻めようというところで、パスがずれたり、ファーストタッチが悪くてボールを奪われたり。ようやくカウンターからサイドに攻め込んでもクロスに工夫がなく、中央の味方に合う場面はほとんどなかった。疲労を考慮してか、延長前半いっぱいで、攻めのアイデアではピカ一のMF長谷川唯を下げたことで、効果的なパスも出せなかった。

 終わってみれば、過去1勝8分け30敗と圧倒的に分が悪かった米国の壁はまたも崩せず、日本は2大会連続の8強止まりとなった。策を尽くし、五輪、W杯という世界一を決める舞台での米国戦では、優勝した2011年W杯決勝でPK戦勝ち(記録上は引き分け)したとき以来の延長戦にまでは持ち込んだ。チームとして戦術面でのまとまりは見事だったが、メダルには手が届かなかった。

 1対1の攻守での強さ、プレスをかけられた際の判断力など、まだ向上すべき点はある。海外のチームに所属する選手が半数を大きく超えるようになったなでしこジャパン。それぞれのクラブに戻り、さらに個々の力を磨いてほしい。(編集委員 川島健司)

かわしま・けんじ 1963年、東京都生まれ。87年入社。宇都宮支局、地方部を経て91年に運動部。97~2001年にはロンドンを拠点に主に欧州のスポーツを取材。運動部デスク、部長を経て、14年から編集委員。17~21年は、東京オリンピック・パラリンピック準備室長を兼務した。サッカーのワールドカップは2022年カタール大会など男女合わせて計7大会を現地取材。

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