「燃やすしかない」紙おむつ、少子高齢化時代の処理法探る…京都・亀岡市が再資源化実験
読売新聞 / 2024年8月4日 11時55分
京都府亀岡市は6月から、保育園で出る使用済みの紙おむつを再資源化する実証実験を始めた。再資源化ノウハウを持つ民間施設に処理を委託し、今後は高齢者施設の紙おむつにも対象を広げる構えだ。高齢化に伴う大人用の紙おむつ処理は増加しており、府内でいち早く、少子高齢化時代に適応したおむつ処理への道筋を探っている。(相間美菜子)
市では、紙おむつを「燃やすしかないごみ」として、生ごみ類と同じ扱いをしている。市が2022年度に処理した可燃ごみ1万9232トンのうち、使用済み紙おむつの処理量は1530トンと試算され、約8%を占めた。
可燃物ではあるものの、紙おむつはパルプやプラスチック、高吸水性樹脂(SAP)からなり、水分を多く含んで燃えにくい。そのため重油などの燃料が必要になり、焼却炉を傷める原因にもなる。
市は子育て支援として、22年11月から、保育施設約30か所に紙おむつを無償提供し、週に1度回収している。その紙おむつを使って今回、再資源化を探ることにした。
9園で回収
園では紙おむつを臭気対策のために設置された密封する機械に入れ、保育士がごみ袋にまとめている。実証実験では、一部の保育所など9園で市の収集車が紙おむつを回収し、廃棄物処理施設「南丹清掃」(亀岡市)に運ぶ。
南丹清掃では、水と薬剤と一緒に紙おむつを機械に投入し、1時間半程度熱しながら回転させる。熱や薬剤で殺菌されると同時に、回転の衝撃により粉砕され、パルプとSAPが溶け込んだ水とプラスチックの破片に分かれる。
市は今後、取り出せるパルプとプラスチックの量などを調べ、再資源化を探る。想定では、パルプはトイレットペーパーや再生紙に、プラスチックは新たな製品に生まれ変わるという。製品化の時期などについては、実験の結果を踏まえて検討するとしており、今年度は約10トンの紙おむつを回収する予定だという。
高齢者施設でも予定
桂川孝裕市長は6月3日の記者会見で、来年度以降は高齢者施設などに実験を拡大させる予定だと述べた。
大人用紙おむつは、高齢化で消費量が増加している。少子化の一方、環境省の推計では、一般廃棄物に占める紙おむつの割合が20年度の5・2~5・4%から30年度には6・6~7・1%に増える見込みだ。焼却処理のしにくさもあり、同省は既存の廃棄物処理施設ではこれまで通り焼却処分できない恐れを指摘している。
同省は、自治体に紙おむつの再生利用を促すためガイドラインを策定し、30年度までに150の自治体が実施・検討を行うことを目指している。
だが、23年度に行われた調査では、一部・すべてを再利用しているか、実施を検討しているかの自治体は78にとどまった。桂川市長は「市内で出されるごみの量を減らし、資源や製品を効率よく使い付加価値を創出する『サーキュラーエコノミー』を実現したい。他の市町村の見本になれば」と話す。
「世界に誇れる環境先進都市」目指す
市は「世界に誇れる環境先進都市」を目指している。2018年に「プラスチックごみゼロ宣言」を出し、21年には「環境先進都市推進部」を新設、すべてのプラスチック製レジ袋の提供を禁止する条例を施行した。今月1日には、環境をテーマにした情報を発信する拠点をオープンさせた。
◇
紙おむつの実証実験が波に乗れば、現場にとってメリットは“一石二鳥”にとどまらない。
保育施設で子どもが使った紙おむつを巡っては近年、多くの施設で保護者に持ち帰らせていることが問題に。厚生労働省は23年、施設での処分を推奨する通知を全国の自治体に出したが、施設内の衛生環境や保管スペースの確保などの課題もある。紙おむつを亀岡市が回収することにより、保護者や園に加え、環境への配慮にもなる。
再資源化について環境省の担当者は「循環型社会の構築に寄与する重要な取り組み。SDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながるため、効果的な方法についてさらに検討を進めていきたい」としている。
高齢化が顕著に
高齢化は全国的に進んでいるが、亀岡市でもその傾向は顕著だ。同市健康福祉部によると、2018年に28.7%(府28.9%)だった高齢化率は、22年には31.1%(府29.6%)と2.4ポイント増(府0.7ポイント増)だった。
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