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津波で流された釜石の洋食店、盛岡で喫茶店として再出発…懐かしの味も復活

読売新聞 / 2024年8月11日 17時22分

人気メニューのハンバーグピラフ

 東日本大震災の津波で、岩手県釜石市の洋食店を流された男性が7月、避難先の盛岡市で妻と喫茶店をオープンした。雑貨屋を改修して整備した2階建ての店舗はアートで彩られ、常連客に愛された懐かしの味も復活。「誰もがほっとできる場所にしたい」と意気込んでいる。(冨田駿)

 店を切り盛りするのは、釜石市出身の前野隆彦さん(60)と妻の中條いずみさん(44)。前野さんは、震災前まで同市の海沿いにある洋食店「ポートまえの」を母や2人の姉と営んでいた。

 13年前のあの日。営業中に大きな揺れに見舞われた。数人の客を避難させて向かった高台からは、津波が街を襲うのを目の当たりにし、自宅兼店舗も流された。

 間もなく親戚宅がある盛岡市に避難し、約3年後にいずみさんと結婚。長女も誕生するなど、ホテルや老人ホームなどの調理場で無我夢中で働いた。

 転機は震災から10年の節目がたとうとしていた2020年秋。前野さんは、被災した店を1日限定で復活させる釜石市内のイベントに参加した。駆け付けた当時の常連客らに、かつての人気メニュー「ハンバーグピラフ」などを提供すると、「待ってました」「これが食べたかった」と笑顔であふれた。夢のような時間を過ごし、「チャンスがあればもう一回お店をやりたい」との思いが芽生えた。

 盛岡市紅葉が丘の住宅街にある雑貨屋が移転することになり、昨年4月、知人だった大家から「ここを使わないか」と声がかかった。夫の思いをくみ取ったいずみさんは出店を即決。前野さんも不安はあったが腹を決めた。

 金融機関からの融資を受け、キッチンなどを改修。客席のある1階はいずみさんが好きな絵画で飾り付け、2階は貸しギャラリーに。店名はいずみさんの好きな詩人の作品に絡め、「キッチンアンドアトリエ 手から手へ」とした。

 看板メニューはもちろん、自慢のハンバーグピラフだ。当時と同じ「デミグラスソース味とシーフードピラフ」「てりやきソース味とピリ辛ピラフ」の2種類。肉には自家製の塩 こうじを練り込むことで健康的でまろやかな味わいにアレンジした。震災後に覚えたスパイスカレーもメニューに加わった。

 「還暦からの冒険でわくわくしている。手をかけて作った料理を食べて元気になってもらえたら」と前野さん。いずみさんも「家族の成長とともに親しまれるお店にしたい」と寄り添う。

 営業は午前10時半~午後6時。日、月曜日が定休。

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