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基礎的財政収支 黒字化試算で健全化を怠るな

読売新聞 / 2024年8月5日 5時0分

 政府は、国と地方の基礎的財政収支(PB)が2025年度に黒字化する試算を公表した。しかし、試算に楽観せず、財政健全化に着実に取り組むことが重要だ。

 PBは、借金に頼らずに政策に使う経費をどれだけ税収などで賄えているかを表す指標だ。

 政府は、02年にPBの黒字化目標を導入したものの、達成したことは一度もない。今年1月の試算でも、25年度は1・1兆円の赤字になると予想していた。

 政府が、今回初めて、25年度にPBが8000億円の黒字になるとの試算を発表したのは、企業業績の向上や物価高などを受けた税収増を根拠としている。黒字化が実現すれば、34年ぶりとなる。

 だが、試算上で黒字化するとしても、実現は容易ではない。年度の途中に組む補正予算が考慮されていないからだ。

 政府は、コロナ禍に見舞われた20年度に73兆円という大規模な補正予算を組み、21年度、22年度も30兆円台を計上した。

 昨年6月に「歳出構造を平時に戻していく」との政府方針を示したにもかかわらず、23年度の補正予算は13兆円に膨らみ、財政再建の道筋は遠いままだ。大型補正が常態化しているようでは、25年度の黒字化は到底見込めまい。

 岸田首相は税収増を想定して、今秋には、年金受給世帯への給付金などを含む経済対策を策定する方針だが、野放図な財政出動は慎まねばならない。

 財政再建と経済成長は両立させる必要がある。だが、試算が好転したのは、家計を苦しめている物価高の結果、消費税収や法人税収、個人の所得税収が増えている面が大きく、手放しで喜べない。

 25年度の予算編成に向けた概算要求基準(シーリング)も、前年度とほぼ同じ内容で、財政健全化の意気込みは見えない。

 シーリングは各省庁が予算要求する際の目安だが、賃上げや物価高対策などの重要施策は、要求時に金額を明示しない「事項要求」を認めている。これでは、要求が青天井となる懸念がある。

 国債など国の借金の残高は約1300兆円に上る。国内総生産(GDP)比で2倍以上に達しており、主要先進国で最悪の水準だ。たとえ、25年度にPBが黒字化したとしても、巨額の債務を減らしていく一里塚にすぎない。

 財政への不安が、消費の抑制につながっているとも指摘される。政府・与党は、安心できる財政健全化の道筋を示してほしい。

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