1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

ケーキに天ぷらや赤飯にまで…甘い香りの食べられる「食香バラ」、生産するのは国内でただ一か所

読売新聞 / 2024年8月12日 16時0分

食香バラを笑顔で見つめる登坂さん。開花時期には甘い香りが漂う(6月、群馬県中之条町で)

「登坂園芸」社長 登坂哲也さん 43

 鮮やかな色と甘い香りに加え、食感も楽しめるバラ――。そんな「食香バラ」の苗木を国内で唯一生産している。地元では特産品にする動きも広がり始め、「いずれは土産などの加工品販売にも挑戦したい」と意気込む。

 花の栽培が盛んな群馬県中之条町の下沢渡地区で、台木に接ぎ木して食香バラの苗を育てている。ピンク2種類と白の計3種類を栽培し、毎年約1000本を出荷。食香バラは、サラダに使ったり、湯を注いで茶にしたりできる。栽培を始めて8年近くたち、「町の産業にしたい」という夢が膨らんだ。

 父は地元でシクラメンを育てる花農家だった。「いずれは自分が継ぐのだろう」と漠然と考え、大学では園芸学を専攻した。「海外で途上国の人たちの役に立ちたい」と思い、2004年から青年海外協力隊としてエチオピアに赴任。2年間、現地の大学で花の栽培方法の講義などを担当し、25歳で帰国した。

 東京都内にある海外の種苗を輸入販売する会社で働き、30歳で結婚。ほどなく長女が誕生し、「地域のいろんな人との関わりの中で子育てがしたい」と13年に地元へ戻り、家業に就いた。

 「中国に唐の時代から食べられているバラがある。日本で育てないか」。フラワーアレンジメントが専門の知人からそんな話が舞い込んだのは、帰郷して約3年後のことだった。純粋に「面白い」と感じた。知人と産地の山東省を訪れ、生産者から枝を分けてもらい、接ぎ木の技術を習得しながら徐々に増やしていった。

 約5年前、 花卉 かき栽培を産業振興の軸に据える町が苗木約600本を購入してくれ、町営観光庭園で花の栽培が行われるようになった。町内の花生産者らでつくる「町花ブランド化協議会」が食香バラを収穫して乾燥させ、販売する体制が出来上がった。

 ただ、食香バラの認知度はまだ低い。「ただ栽培するだけでなく、普及にも力を入れたい」という気持ちで今年2月、県外の高校生と大学生計3人を就業体験で受け入れた。この3人がすぐに自分たちのインスタグラムを開設し、食香バラを使ったスコーンや天ぷらなどの料理を発信し始めた。6月には、町内の飲食店など約15店が食香バラのスイーツや飲み物、食事を提供する企画をした。

 チーズケーキや赤飯を販売した飲食店の店員からは「おかげで客との会話が弾んだ」との声をもらった。「自分の育てたバラが人と人をつなげていて、とてもうれしかった」。花の町・中之条に、新たな可能性を広げている。(桜木優樹)

とさか・てつや 1981年3月、中之条町生まれ。千葉大園芸学部卒業。岐阜大大学院を中退し、青年海外協力隊としてエチオピアで活動した。約7年間、東京都内の種苗会社で勤務した後、2013年に帰郷。父の花卉農園「登坂園芸」に就職し、16年頃に食香バラの苗の生産を始めた。両親と妻、子供3人との7人暮らし。シクラメンやアジサイも育てている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください