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原爆や戦争の「悲しい記憶はすべて短歌に」…広島の94歳女性、大学院生の熱意で出版決意

読売新聞 / 2024年8月6日 8時35分

歌集「ひろしまを想う」6日に

 15歳で被爆した 切明 きりあけ千枝子さん(94)(広島市安佐南区)が、原爆や戦争を詠んだ初めての歌集「ひろしまを おもう」=写真=を6日に出版する。「悲しい記憶はすべて短歌にぶつけてきた」。切明さんの言葉に胸を打たれた知人の大学院生に後押しされた。失われた多くの命を思い、平和を願う。(広島総局 山下佳穂)

 切明さんは爆心地から約2キロの橋のたもとで被爆した。爆風で近くにあった小屋の下敷きになったが、大きなけがはなかった。

 当時、広島県立広島第二高等女学校4年生。学校には学徒動員で屋外作業中に大やけどを負った生徒が多く戻ってきた。手当てのかいなく次々と亡くなった。火葬し、涙を拭いながら遺骨を拾った。

 〈この手もて 友の 亡骸 なきがら 焼きし日よ その桜色した 骨を拾へり〉

 短歌を始めたのは約60年前だ。小学生だった長男が、学校の身体検査で視力の低下を指摘された。失明の恐れもあるという医師の言葉に「原爆のせいじゃないか」との不安が頭をよぎった。

 そんな時、偶然新聞の短歌投稿欄が目に入った。短歌を作ったことはなかったが、心の痛みをはき出すように投稿すると、少し気持ちが和らいだ。それ以来、折に触れて短歌を詠み、ノートなどに書き残した。詠みためた短歌は1500首に上るが、歌集を出すつもりはなかった。

 3年前に広島市立大で被爆者の証言会の開催に携わっていた一橋大の大学院生佐藤 ゆうさん(23)と出会った。佐藤さんに短歌を見せると、歌集を出してはと持ちかけられた。「恥ずかしい」と断ったが、3か月がかりで説得され、熱意に負けた。佐藤さんは「31文字の短歌に、切明さんが見てきた情景や思いがこもっている。切明さんの記憶が未来に生き続けてほしかった」と語る。

 切明さんに託されて佐藤さんが選んだ500首を収録した歌集は、被爆79年となる8月6日に出版することを決めた。

 〈八月六日 家を出たまま 帰らざる人 あまたいる街 それがヒロシマ〉

 切明さんは「平和はじっと待っていても自分から来てくれない。力を尽くして、引き寄せ、つかみ取り、離してはいけないもの。みんなで必死に守らないと、すぐに逃げてしまう」と語る。歌集が平和のための一滴になればと願う。

 歌集は税込み1000円。アマゾンのほか、広島県内の書店などで購入できる。

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