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メダル1個の日本競泳陣…自分の目標に向き合い、もがき続ける強い気持ちが必要[柴田亜衣さんの目]

読売新聞 / 2024年8月5日 13時47分

男子400メートル個人メドレーで銀メダルを獲得した松下知之(7月28日、パリ郊外で)=原田拓未撮影

 パリオリンピックの競泳は4日に全日程が終了し、日本勢の獲得したメダルは男子400メートル個人メドレーの松下知之(東洋大)の銀メダル一つで、メダルなしに終わった1996年アトランタ大会後では最も少ない数となった。2004年アテネ五輪女子800メートル自由形金メダリストの柴田亜衣さんが今大会を振り返る。(デジタル編集部)

 メダルの数はさておき、個人種目でベストタイムがほとんど出ていない、五輪選考会よりもタイムを落としてしまうなど、悔しい結果だった。

 なぜこのタイムだったのか、という理由を選手自身が分かっているのだろうか。水泳というのは練習の時からずっとタイムを計り続けているので、自分の調子の良し悪しや、このタイムで泳いでいたら次の試合はこのぐらいか、などと考えるものだ。今回、「自分のタイムと体の感覚が合っていない」と話す選手が何人かいたが、それにはどういう原因があったのか。(東京大会は無観客で)パリは有観客で雰囲気が違ったという選手もいた。その五輪独特の雰囲気にのまれないような自分の気持ちの持って行き方が足りなかったのか、もともと調子が上げられなかったのか、理由はいろいろあったはずだ。

 オリンピックではこういう泳ぎをしたいという明確な目標をもって、何秒で泳ぐためには前半を何秒で入るというレース展開を思い描きながら練習を続けてきた選手が、「予選では気持ちよく泳いだ」ではブレが生じないだろうか。決勝で結果を出したいのであれば、準決勝もある程度のところまでいっておかないと世界で勝負することは難しい。選手の話す内容がふわっとして聞こえたが、自分が決めたことを最後までやり続けてもがいてみようという強い気持ちがもっとほしかった。

 世界との差を感じる大会になったが、4年後に向けてより多くの選手に国際大会を経験させることは大事だ。派遣標準記録の意味がなくなっては困るが、柔軟に考えて、出場の幅を広げる方策をとっていいと思う。

 私は初めて日本代表になったのが大学2年生の時で、その当時は1500メートルしか標準記録を切っていなかった。でも400メートルと800メートルが1枠空いていたので国際大会に出してもらい、大学4年生になって400と800の標準記録を切ってアテネオリンピックに行くことができた。準備期間に世界での経験を積み重ねることによってオリンピック本番につながっていくと思う。 

松下選手はさらに上を目指せる

 日本で印象に残ったのは、銀メダルの松下知之選手、平井瑞希選手(バタフライ)、そしてベテランの鈴木聡美選手(平泳ぎ)だ。

 松下選手は4冠のレオン・マルシャン選手(フランス)と同じレースという独特の雰囲気の中でベストタイムを出してメダルを取るというのはメンタルの強さがあってのこと。最後のクロールが持ち味なので、その他の泳ぎを速くできればトータルのタイムが縮められる。完成されているわけではなく、まだまだ伸びしろのある選手で、さらに上を目指せる選手だ。

 初の五輪出場の平井選手は個人種目ではスタート失敗などもあったが、経験を積めば落ち着いて泳げるようになる。決勝に残ることもでき、リレー種目では自分のベストより速いタイムで泳げたことでいい経験を積んだ。しっかりとタイムを縮めていけば、メダル獲得の目標もこの4年間で実現できるのではないか。

 33歳の鈴木選手は自分の置かれた状況やタイムについて、しっかり自己分析ができているのはベテランならではだ。あの年齢で気持ちも体力も維持して、なおかつ「悔しい」という言葉が素直に出てくるところがすごい。悔しいと感じたことをバネにしてまた頑張れる。「悔しさ」って大事だな、と鈴木選手を見て改めて思った。

しばた あい 1982年福岡県生まれ。3歳で水泳を始め、鹿屋体育大学2年で日本代表入り。2004年アテネ五輪女子800メートル自由形で日本人の女子自由形選手では初の金メダルを獲得。08年北京五輪出場後に現役を引退。女子400メートル自由形 (4分05秒19)と女子1500メートル自由形(15分58秒55)の日本記録保持者。

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