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ハシナ首相の父の像を棒で殴打…バングラデシュデモ、経済格差・強権への不満が一気に噴出

読売新聞 / 2024年8月6日 7時24分

 【ニューデリー=浅野友美】バングラデシュのシェイク・ハシナ首相(76)が5日、突然の辞任に追い込まれた。公務員採用の優遇枠を巡るデモが政権崩壊を招いた背景には、拡大する経済格差やハシナ氏の強権的な政治姿勢に対する国民の強い不満がある。辞任の影響は対中戦略の一環でバングラデシュを支援してきた隣国インドや、日本にも及ぶ可能性がある。

 首都ダッカでは5日、ハシナ氏の父で「建国の父」と呼ばれるムジブル・ラーマン初代大統領の像に男がよじ登った。男が顔の部分を棒で殴打すると、デモ参加者から歓声が上がった。

 ハシナ氏が首相に返り咲いたのは2009年だった。以後、バングラデシュの経済は好調だった。11年以降は実質国内総生産(GDP)成長率がおおむね6~8%で推移した。衣料品の輸出推進や外資誘致などが堅調な経済維持の原動力になった。26年には「後発開発途上国」の分類から外れる見通しとなっている。

 学生たちの抗議デモは、公務員採用での優遇枠の廃止を違憲とする高等裁判所の判決がきっかけだった。1971年のパキスタンからの独立戦争に参加した兵士の家族などに30%を割り当てる内容で独立を主導した与党アワミ連盟の支持者を特別扱いする制度と映る。

 デモが政権崩壊に発展したのは、経済成長の恩恵が広く行き渡っていない現状に対する不満がくすぶっていたことが一因とみられる。

 地元メディアによると、15~24歳で就学や就職をしていないニートは約4割に上る。ハシナ政権の強権体質への反発が一気に噴出した面もある。

 ハシナ政権は13年、当局が「国家のイメージを損なう」と判断した出版物を禁ずる法改正を実施した。

 1月の総選挙を前に、中立的な選挙管理内閣が発足しなかったことに抗議したデモ参加者1万人以上を拘束し、主要野党は参加をボイコットした。ハシナ政権は連続4期目入りした。

 バングラデシュでは歴史的に、議会で多数派を占めるアワミ連盟と、野党バングラデシュ民族主義党(BNP)が、激しく対立しながら政権交代してきた。今回、ハシナ氏を辞任に追い込んだデモの主体は学生だったが、野党側が関与を強めてデモを変質させたとの見方が強まっている。

 軍の役割も注目される。陸軍参謀長が5日、ハシナ氏の辞任を発表し、暫定政権を発足させる方針を発表した。当面は軍政が敷かれる可能性がある。

 バングラデシュは、インドと東南アジアをつなぐ地政学的な要衝にある一方、中国からインド洋への出口にも位置している。

 インド太平洋地域を重視するインドや日本は、バングラデシュでの道路や鉄道の開発を支援してきた。中国がベンガル湾に面するバングラデシュ南部で潜水艦を収容できる海軍基地の建設を支援しているとされる。

 バングラデシュと緊密な関係を保つ日本やインドは、ハシナ政権退陣の影響を注視しているとみられる。

 ◆バングラデシュ=国土面積は14万7000平方キロ・メートルで日本の約4割に相当。人口は約1億7000万人。約9割がイスラム教徒。1971年にパキスタンから独立したが、現在も英連邦圏に含まれる。91年の憲法改正で大統領制から議院内閣制に移行し、一時期を除き、5年ごとに総選挙が実施されてきた。主要産業は縫製業で、欧米向け輸出が伸びている。日本の外務省によると、在留邦人数(昨年10月時点)は1122人。

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