「常に9秒台・自己ベスト9秒8台」が100m決勝進出には必要…[朝原宣治の目]
読売新聞 / 2024年8月6日 6時22分
4日に行われたパリオリンピックの陸上男子100メートル準決勝で、サニブラウン・ハキーム(東レ)は日本歴代2位の9秒96(追い風0・5メートル)ながら、3組4着で日本勢92年ぶりの決勝進出を逃した。決勝はノア・ライルズ(米)が9秒79で制した。
[朝原宣治の目]
男子スプリント界の「新たな時代の幕開け」と言える五輪となった。9秒台なら決勝に行ける時代は去った。決勝進出ラインは9秒93。決勝は史上初めて8人全員が9秒台で、7人が9秒7、8台だった。
2012年ロンドン大会はウサイン・ボルト(ジャマイカ)が9秒63で優勝したが、突出していたのは数人。今は全体の底上げが著しい。予選から決勝まで、少しの失敗も許されない中、優勝のライルズは準決勝は組2着通過。普通は自信を失うが、決勝は跳びはねて入場した。スタートは良くはなかったが、ごぼう抜き。実力も悪い流れを断ち切る精神的なタフさも、常人にはない境地にいる。
サニブラウンの準決勝での自己ベストをまずはたたえたい。実力者がそろい、重圧もある中での走りだ。スタートも年々改善して安定し、失敗レースはない。それでも決勝を逃した事実に、悔しさも募るはずだ。
次回五輪の決勝を見据えると、シーズン中いつでも9秒台が出せ、自己ベストは9秒8台が必要だろう。その上で、準決勝から2時間弱の決勝でさらにタイムを上げなければ戦えない。今、世界はそうなっている。(北京五輪男子400メートルリレー銀メダリスト)
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