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北口榛花にメダル期待のやり投げ、記録に「追い風参考」はない…風を味方につけるための「最適角度」は

読売新聞 / 2024年8月7日 7時0分

昨年の世界選手権女王、北口榛花のダイナミックな投てき

 パリオリンピックの陸上競技は7日、昨年の世界選手権で優勝した北口榛花(JAL)に金メダルが期待される女子やり投げ予選が行われる。

 陸上のやりの長さ、重さは男子が2メートル60~70(800グラム)、女子が2メートル20~30(600グラム)など、細かい規定がある。女子の600グラムは、バスケットボールで五輪などでも使われる男子用7号球の重さとほぼ同じだ。

 30メートル以上の助走路を使うやり投げで、女子でも世界のトップは70メートル投げる。意外と軽い、やりを使うこの種目には陸上短距離種目のような「風」による規則がないが、記録上の不公平は生じないのだろうか。国際陸上競技統計者協会(ATFS)会員の野口純正さんに聞いた。

 野口さんによれば、風の影響は、やはりあるのだという。

 「世界トップレベルの選手の場合、(揚力を得やすい)向かい風だと記録が伸びると言われていますが、そうした選手の中にも追い風を得意としている人も少しはいるようです。また、それほどレベルが高くない段階の選手では、追い風の方が有利とも言われています」

 一概に、どの風向きが有利ということは言えないようだ。さらに野口さんは、上空での風速を測ることが難しいという点も指摘する。

 「ドローンなどで上空の風速を計測できたとしても、風が記録に及ぼす影響を算出することは困難です。『追い風と向かい風のどちらが有利か』を断定できないことも、風速を計測しない理由であると考えられます。このあたり、流体力学などの専門家とタイアップして研究してもらいたいですね」

 陸上競技では、200メートルまでの短距離・障害種目と走り幅跳び、三段跳びでは、追い風が風速2メートルを超えると参考記録となる。100メートルでは、50メートルの地点に設置された風速計でスタートから10秒間の風向き、風速を計測する。

 それでは、風を味方につけるためには、やりをどのように投げるのがよいのか。

 やりが飛んでいく方向と地面との角度を「投射角」という(地面から、やりのリリース地点までの高さはこの場合は考えない)。野口さんは「様々な研究結果を見ると、選手の体格、フォーム、レベル、その日の風の状況などによって微妙な違いはあるが35度前後が最適でしょう」という。

 投射角と、飛んでいるやりの先端が向いている角度との差を「迎え角」という。やりの先端が軌道よりも上を向いていれば迎え角はプラスで、下向きならマイナスになる。

「投げ出す時の迎え角は、少しのマイナスか、投射角とほとんど変わらないのがよい」と野口さんは話す。その方が、最高点から落下していく際に、やりが地面と平行に近い状態を保って揚力を受けやすい姿勢になり、距離が伸びやすくなるのだという。

 一般用のやりの一番太い部分の柄の最大直径は男子で3センチ、女子で2・5センチ。投げる際には、途中で失速しないように、やりに強い回転をかけることも大事だ。

 以前は飛びすぎてしまったことがあって規定が変更され、それ以降の世界記録は男子がヤン・ゼレズニーの98メートル48(1996年)、女子はバルボラ・シュポタコバの72メートル28(2008年)。2人ともチェコの選手で、そのチェコを拠点に練習している北口の持つ女子日本記録は67メートル38だ。男子の世界記録は実に28年以上も破られていない。(編集委員 千葉直樹)

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