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「生成AIは急速な勢いで拡大し一時的なブームではない、開発も含めて集中してやっていく」…ニデック・岸田光哉社長兼CEO

読売新聞 / 2024年8月8日 8時47分

ニデックの岸田社長兼最高経営責任者(京都市で)

 モーター大手のニデック(旧日本電産)は、創業者の永守重信氏が経営の第一線から退き、新たな経営体制がスタートした。生成AIを始め、世界でものづくりが大きく変化する中で、ソニーグループ出身で社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した岸田光哉氏から話を聞いた。(聞き手・仁木翔大)

毎日がチャレンジング

 ――社長就任後の所感を。

 「こんなに激動だと思わなかった。それくらい毎日がチャレンジングだ。改めて永守代表が一人でここまでよくやってきたと思う。50年やってきたからこそ、隅から隅まで神経の行き届いた会社になっていると改めて感じる。受け継ぐバトンの重さを実感している。

 ニデックに移った時、製造業という日本が得意だったのにどこかに忘れ去られてしまったところで、腰を据えてやり続けている会社だというイメージで入社し、その通りだと思った。

 初めて滋賀県にある自動車部品の開発センターに入ったが、大雪の中、長靴を履いて毎日通った。3階や4階はエレベーターじゃなくて、歩いて行くというふうになっていた。踊り場のところには『君たちはゆでガエルである』というポスターが貼ってあった。

 やり続けるということを決めて続けると、守ることができる。2000年代前半くらいまで日本の製造業はピカピカピカだった。どこかのタイミングで、大型投資の韓国に持って行かれ、中国も台頭して、日本は強みを失ってしまった」

2兆円規模売り上げ目指す

 ――AI関連に力を入れている。

 「ニデックには幅の広さがある。(機器にかかる熱の負荷を小さくする)水冷モジュールというAI(人工知能)の関連産業に関わるところに足を踏み出すことになっても、ためらうことがない。生成AIは急速な勢いで拡大しており、一時的なブームではない。開発も含めて集中してやっていきたい。

 検索エンジンのような機械学習がAIの原型だとすれば、データの蓄積によって、人がどのように反応するのかということにつながる検索エンジンは、AIそのものだ。履歴から未来を予測して提案する。生活にあふれてきており、そのうち、誰も意識せずに溶け込んでいくだろう。新たな産業が生まれるというのはこういうことではないか。

 AIサーバー関連で2兆円規模の売り上げを目指したい。GPU(画像処理装置)を冷やすモジュールもあれば、データセンターを冷やすのに使う部品もある。サーバーだけでなく、データセンターを丸ごと手がけることもあり得る。数兆円規模の事業になると思っている。30年には2兆円を目指したい」

 ――中国の車載事業の現状は。

 「ダメなわけではない。利益を生み出せないということはある意味、レッドオーシャンにある。地場メーカーは国の補助金を受けているかもしれないが、我々も開発を進めており、24年度からは利益を出していく段階に入っている。

 安売り競争にもまれ、大量に販売していくところからは手を引いたが、(電気自動車の心臓部になる)トラクションモーターを含めて、車載部品は強化していく。パワーステアリングやブレーキのモーターも中国での売り上げは拡大している。電子制御も含めたシステム販売が広がっている。中国だけでなく、欧州や米国でも拡大できる」

航空機「1人1台という時代」

 ――航空機分野にも力を入れている。

 「大きなポテンシャルをみている。(ブラジルに本社がある)航空機大手、エンブラエル社に社員を派遣して、将来図や技術のロードマップを共有し、どういうことができるのか、仕込みをしている。1人乗りから数人乗りまでバリエーションが出てくる。永守氏は、『1人1台という時代が来る』と言っていた。楽しみだ。航空機は、車以上に参入障壁があって、求められる品質も高い。合弁相手としっかり手を組んで、揺るぎないものに育てていきたい」

 ――今後のM&A(企業の合併・買収)の戦略は。

 「これからは、モーターの会社というよりも、環境の課題を解決していく、ソリューションプロバイダーになりたい。ソフトウェアやエレクトロニクスの分野を強化したい。永守氏を含めた経営陣で足りないものは何なのかを議論している。たとえば、温度をどのようにコントロールするのかという技術は、重要な領域だ」

 ――ニデックは、創業者の強いリーダーシップに依存していることが課題だという指摘もある。

 「その通りだ。時間をかけてしっかりとやっていきたい。トップの決裁の量は驚くようなもので、これまでは一人に頼ってきた。そういう形で成長してきたのがニデックだ。何となくぼんやりと引き継ぐのではなく、プロセスに落としていくのが私の役割だと思っている。ブラックボックスになっている創業者の考えを解析し、仕組み作りを進めたい。

 創業者依存でやってきた事業計画の策定を今回、グループの経営陣でやってみた。我々がやっていかないと前に進めないと思う。時代に合わせてオープンで透明性が高い、新たな風土を加えていきたい」

◆岸田光哉氏(きしだ・みつや) 1983年京大教育卒、ソニー(現ソニーグループ)入社。2022年日本電産(現ニデック)入社。専務執行役員、副社長執行役員を経て、24年4月からニデック社長兼最高経営責任者(CEO)。香川県出身。趣味は音楽で、中学生の頃から、ソウルやR&Bといった黒人音楽を聞いている。

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