投げ技「封印」解いてくれた世界王者と再戦、東京「銀」文田健一郎が豪快反り投げでメダル…「体が勝手に動いた」
読売新聞 / 2024年8月6日 18時27分
パリオリンピックのレスリングは5日に行われた男子グレコローマン60キロ級で、東京五輪銀メダリストの文田健一郎(ミキハウス)の銀メダル以上が確定。初戦の2回戦と3回戦を快勝し、準決勝で昨年の世界選手権覇者のジョラマン・シャルシェンベコフ(キルギス)に4―3で競り勝った。
「金」に挑む決勝を前に、文田にとって因縁の一戦が待っていた。準決勝で対戦したのは、昨年9月の世界選手権決勝で敗れたキルギスのジョラマン・シャルシェンベコフ。「僕を目覚めさせてくれた相手」。そう感謝するライバルがいなければ、五輪で再びメダルを手にすることはなかった。本気で思っている。
11か月前の対戦は、開始早々に4点を奪われるなど、シャルシェンベコフの攻撃に圧倒された。当時は、東京五輪まで得意としていた豪快な投げ技を「封印」し、守りを意識して堅実に戦うスタイルを模索していた。「金メダルを取るには攻めより守り」と、迷いつつ取り組んでいたが、手痛い敗戦を機に思い直した。
「どちらかにこだわるのはもうやめよう」。攻めも、守りも、自分らしくのびのびとやればいい。投げ技も無理には狙わないが、「体が勝手に動いたら投げる」と解禁。すると、守りも攻めも不思議と向上した。
五輪の舞台で迎えた再戦。0―1とリードされて迎えた第2ピリオドに、豪快な反り投げを見舞って逆転に成功した。もちろん、狙ってはいない。「体が勝手に動いた。あの試合から今日までの時間が、この勝利を作ってくれた」。今度は逆に、世界王者を力でねじ伏せた。
東京五輪の銀に続く2大会連続のメダルを確定させ、頂点まであと1勝。決勝は、「東京から3年分の思いを全部ぶつけたい」。攻めも守りも自分らしく。好敵手がマットの上で教えてくれた「心」を胸に戦い抜く。(佐野司)
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